研究実績の概要 |
睡眠障害は抑うつ・不安症状を引き起こす要因となり、患者のQOLを著しく低下させる。抗うつ薬や抗不安薬の副作用の観点から、本研究では睡眠障害に伴う不安症状を軽減する植物精油の探索を行った。睡眠障害モデルマウスは、専用の装置にてマウスを1週間飼育することで作成した。睡眠障害に伴い発現する不安様行動は、高架式十字迷路試験を用いて解析した。その結果、睡眠障害モデルマウスにおいては、高架式十字迷路試験におけるオープンアームへの進入回数と滞在時間がコントロールマウスと比較して顕著に減少した。さらに、ストレスに関連する脳内遺伝子の発現を解析した結果、うつ病のマーカーであるDUSP1タンパク質の遺伝子発現量の増加も観察された。 本実験では、セサミオイルに着目した。睡眠障害モデルマウスにセサミオイルを吸入投与した結果、不安様行動とDUSP1遺伝子発現量が緩やかに減少した。次にセサミオイルの抗不安作用に寄与する成分の同定を行った。セサミオイルの主要成分として、2,5-dimethylpyrazine、2-methoxy phenol、furfuryl mercaptanを同定した。単一成分の吸入投与において、2,5-dimethylpyrazineおよび2-methoxy phenol群で高架式十字迷路試験における抗不安作用が観察されたが、furfuryl mercaptan群ではその作用は弱かった。海馬および線条体におけるDUSP1の発現量は、2,5-dimethylpyrazineおよび2-methoxy phenol群で有意に減少していた。以上の研究から、セサミオイルの最適濃度と有効成分を明らかにした。特に、2,5-dimethylpyrazineと2-methoxy phenolはDUSP1の発現を有意に抑制したことから、これらの分子を有効な抗ストレス剤として利用できる可能性がある。
|