研究実績の概要 |
本年度は、これまでの研究成果を基に、未同定のGranaticin生合成に関するエノイル還元酵素の同定および機能解析を目的に研究を遂行した。既に同定済みのエノイル還元酵素であるActVI-2と一定の相同性を示す酵素遺伝子を中心に異宿主発現および基質(R)-DNPA(DNPA生合成遺伝子導入株の培養抽出エキスより各種クロマトグラフィーを用いて単離した)との酵素反応を行った。その結果、組換え酵素として発現した一部の酵素において、(R)-DNPAからDDHKと同一の質量を示す化合物への変換が認められた。以前の研究において、作製したDDHKの立体異性体の標準品との比較から本酵素もこれまでに機能解析を行ってきたActVI-2と同様に高い立体特異性を示す可能性が推測された。しかし、活性強度などにおいて検討の余地がある結果であったことから本酵素の機能解析は引き続き行う必要があると考えている。また、これまでの研究の成果として査読付き学術論文「Characterization of stereospecific enoyl reductase ActVI-ORF2 for pyran ring formation in the actinorhodin biosynthesis of Streptomyces coelicolor A3(2), Bioorg. Med. Chem. Lett. 66 (2022) 128727」の発表を行うことが出来た。これによりActinorhodin生合成経路において未確定であった反応工程のひとつを明らかにすることができた。さらに、エノイル還元酵素ActVI-2の非常に高い立体特異性も明らかにすることで、一連のエノイル還元酵素の機能の解析のための足場を作ることが出来た。さらに、日本薬学会第143年会(札幌)では、「Actinorhodin生合成のin vitro再構成に向けた酵素反応条件の最適化(第2報)」としてこれまでに研究により得られたActVI-2酵素を利用した成果を発表している。
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