今年度はこれまでに得られたコルクタケ菌株について培養を行うことで代謝物の解析を行った.前年度の実験にて使用した培地に加え,3種の液体培地を用いて1-3週間培養を行い,得られた培養物についてLCMSを用い分析を行った.その結果,昨年度用いた培地ではβ-amyrinが確認できなかったが,新たに使用したイースト・モルト(YM)培地では確認することが出来た.標品と培養物中のMS2スペクトラムの比較においても良好な一致が得られた.さらに,他の分析方法であるGCMSを用いてβ-amyrinの有無を確認すると,YM培地においては生産が確認された.このことからコルクタケ菌株においてオレアナン型トリテルペンの生産が行われていることを確認できた.また,数種のβ-amyrin産生が可能な培養条件を見出した.これは真菌としてはこれまでに報告がなく,非常に珍しい現象である.宿主からのオレアナン類の取り込みによらない生合成経路の発見に繋がることが期待される. さらに,この生合成に関わると予想される生合成遺伝子についても実験を進めた.上記の条件にて培養したコルクタケ菌体よりcDNAを抽出したところ,約2.3 Kbpの塩基配列を得た.これはシーケンス解析から得られた生合成遺伝子の予想配列に比べ約0.4 Kbp長く,その配列の特徴からイントロンを含む塩基配列であると考えられる.そのため培養条件,およびPCR条件を検討し再度遺伝子解析を行うことで目的の塩基配列を得ることができると考えられる.
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