腎癌患者検体を対象として質量分析計を用いた高精度分析により、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)治療のバイオマーカーを探索することを目指し、以下の研究を進めた。 (1)腎癌におけるバイオマーカー候補(生体内物質)を探索する。(2)ICIの薬物血中濃度を測定する。(3)バイオマーカー候補及びICI血中濃度と、ICI治療の臨床効果(薬効、副作用)との関連を評価する。 (1)腎癌患者の尿検体を対象として、LC-MS/MSを用いて尿中の生体内物質の分析を試みた。前処理法、MSの最適化、LCの最適化を行い、3つの分析法を構築することにより、50種以上の生体内物質が測定可能となった。これらの分析法を用いて、腎癌患者と非癌患者の尿を比較したところ、いくつかの生体内物質について違いが確認された。臨床データからの解析を加えたところ、これらの生体内物質は腎癌診断のバイオマーカーとなり得る可能性を見出した。 (2)腎癌でICIが投与されている患者の血液中のICI濃度をLC-MS/MSを用いて分析することを目指した。まず、腎癌で使用される頻度が高いICIである抗体医薬品ニボルマブについて、前処理法を検討した。消化法として、トリプシン固相化スピンカラム、nSMOL法、自己消化やキモトリプシン活性を抑えたトリプシンを用いた溶液中消化について調べたところ、①トリプシン固相化スピンカラムを選択することとした。次に、検出するペプチドを探索したところ、強いシグナルのペプチド検出に成功した。今後、分析法のさらなる改良により患者検体について分析する予定である。 今回の研究では、(1)及び(2)について進めることができた。今後、これらの検討結果を基にして生体内物資及びICI血中濃度と臨床効果との関連性について明らかとする。
|