研究課題/領域番号 |
19K16416
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
山城 貴弘 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(薬学), 助教 (20826614)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | トランスポーター / ピリドキシン / 腸管吸収 |
研究実績の概要 |
ピリドキシン(ビタミンB6)は水溶性ビタミンの一つであり、その欠乏は様々な疾患につながる。その供給は食物からの摂取に依存しているため、腸管からの十分な吸収の確保ないし吸収不足に起因する欠乏症の回避等の観点から、その吸収機構を把握することは重要である。しかし、ピリドキシンの効率的な腸管吸収のために働くトランスポーターの存在が推定されながらも、その分子実体は未だに不明であり、吸収機構の把握には至っていない。申請者は、この問題への取り組みに着手し、ピリドキシン輸送活性を有するトランスポーター(pyridoxine transporter, PDXT)を見出すことに成功した。 PDXT安定発現系MDCKII細胞での検討により、PDXTを介したピリドキシン輸送はNa+非要求性及びpH感受性(酸性pHでの輸送活性の増大)を示すことが明らかとなった。また、ピリドキシンと共にビタミンB6に属するピリドキサール及びピリドキサミンについて、PDXTのピリドキシン輸送に対する阻害効果を検討したところ、競合阻害の様式を示した。したがって、ピリドキサール及びピリドキサミンに関してもPDXTの基質となる可能性が示唆された。Caco-2細胞(ヒト小腸上皮細胞モデル)においても安定発現系と同様の輸送解析を行ったところ、同等の輸送特性が確認された。さらに、PDXT特異的RNAiによる遺伝子発現抑制の影響を検討したところ、PDXTの発現抑制によりピリドキシン取込は有意に低下した。これらのことから、PDXTはピリドキシンの腸管吸収に関与している可能性が示唆された。 一方で、ラット小腸組織を用いた検討では、PDXT関与による輸送の特徴を確認するには至らず、ヒトとラットでの種差が示唆された。この点に関しては、引き続き検討を行っているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
安定発現系でのPDXTの機能解析(基質親和性、輸送駆動力、阻害剤感受性等の検討)をおおむね完了し、PDXTの輸送特性を明らかにすることができた。さらに、Caco-2細胞(ヒト小腸上皮細胞モデル)での検討により、PDXTのピリドキシン取込への関与を示すことができた。一方で、ラット小腸組織においてはPDXT関与の特徴を見出すことができず、新たな検討課題として浮かび上がってきたが、研究全体としては一定の成果が得られているので、おおむね順調であると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
ピリドキシン摂取により、大腸癌の誘発及び細胞増殖が抑制されることが報告されていることから、ヒト結腸癌由来であり、PDXTの発現が認められるCaco-2細胞を用いてPDXT機能と細胞増殖能との関連性を検討する。ラットでのピリドキシン輸送解析に関しては、分子レベルでのPDXTの輸送解析を進めていく。
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