研究課題/領域番号 |
19K16418
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
高橋 克之 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 薬剤部職員 (10597751)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 抗がん剤感受性 / トリプルネガティブ乳がん |
研究実績の概要 |
エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、human epidermal growth factor receptor (HER)が陰性であるトリプルネガティブ乳癌 (TNBC) は乳癌の約20%を占め、ホルモン受容体陽性乳癌に比較し、予後不良である。TNBCに対しては内分泌療法、抗HER2療法が使用できず、治療効果が期待できるのは殺細胞性抗癌剤のみであり、治療選択肢が少ないため生存期間が短い。唯一、完治が望める方法は外科的切除であるが、切除単独では再発率も高率であるため、再発率の低下や生存割合の向上を目指し、術後補助化学療法が開発され、その効果が認められている。しかしながら、TNBCにおいては前述の通り、術後補助化学療法においても、内分泌療法、抗HER2療法が使用できず、殺細胞性抗癌剤のみが使用されており、他のサブタイプと比較し、再発率も高率である。したがって、術後補助化学療法薬の感受性を高める薬剤の標的分子や術後補助化学療法の効果を予測するバイオマーカの開発が切望される。 本研究では、シャペロン機能を有し、細胞のストレス回避・生存に関わるストレス応答蛋白質Heat shock protein (Hsp) 72に着目し、抗癌剤の感受性を亢進させる分子の探索を行い、TNBC細胞株MDA-MB-231において術後や進行再発の化学療法に用いられる薬剤である5-FUの感受性や5-FU耐性細胞株の増殖に重要な分子を複数同定した。同定された分子が5-FUの感受性や細胞増殖に関与する分子機序についてはわかっておらず、また、機能が未知の分子も含まれており、これらの分子を解析することは新たな薬剤標的や5-FUの効果を予測するバイオマーカを開発するうえで重要であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度の目標であった候補分子のノックアウト細胞および過剰発現細胞を作製には至っていない。その理由としてはスクリーニングを実施したMDA-MB-231株とは異なる5-FU耐性株においてえ候補分子の機能阻害が5-FU感受性に影響を与えないことが判明し、標的分子の選別に難航しているためである。
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今後の研究の推進方策 |
2既に樹立済みである2種のTNBC 5-FU耐性株を用いて、スクリーニングを再度実施し、いずれの細胞株でも5-FU感受性に影響を及ぼす標的分子を同定する予定である。 その後、標的分子のノックアウト細胞、過剰発現細胞株を樹立をすることで標的分子の堅牢性の向上を目指す。さらに、中和抗体の作成およびその効果をin vivo アッセイで明らかとする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の本研究課題以外の業務が一時的に多忙となり、当初計画より遅延したため。 2020年度においては、本研究課題の遂行が可能となる見込みである。
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