研究課題/領域番号 |
19K16419
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
高橋 宏彰 岩手医科大学, 薬学部, 助教 (90815995)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 抗EGFR抗体 / 皮膚障害 / ざ瘡様皮疹 / 皮膚状態 / 経皮水分蒸散量 |
研究実績の概要 |
上皮成長因子受容体(Epidermal Growth Factor Receptor;EGFR)を標的とする抗EGFR抗体薬を用いた薬物治療では、ざ瘡様皮疹をはじめ、皮膚乾燥、爪囲炎等の様々な皮膚障害が高頻度で認められ、これらの抗EGFR抗体薬に起因する皮膚障害が、外見的な変化による心理的苦痛のみならず、患者のQOLにも影響を及ぼすことが報告されている。一方、抗EGFR抗体薬による皮膚障害の程度と治療効果が相関することが報告されていることから、皮膚障害が重篤化して治療が中止にならないように皮膚障害を適切にコントロールする必要がある。抗EGFR抗体薬による治療開始時に皮膚障害が重篤となる患者を予測出来れば、皮膚障害対策を強化し、治療の継続に繋げることが可能となる。そこで、初年度は、抗EGFR抗体薬による皮膚障害の発現に関連する要因について後方視的に検討した。 がん薬物治療として抗EGFR抗体薬を初めて使用した大腸がん患者を対象として、後ろ向きに電子カルテを調査した。調査項目は、患者基本情報(性別、年齢、身長、体重、stage、既往歴、化学療法歴)、血液生化学検査(AST、ALT、T-Bil、Cre)、皮膚障害の発現状況(ざ瘡様皮疹の程度)とした。 各患者をざ瘡様皮疹の程度でgrade 1以下とgrade 2以上の2群に分類し、各要因について比較した。その結果、ざ瘡様皮疹の程度がgrade 2以上の患者では、grade1以下の患者と比較して、体重及び体表面積が有意に大きかった。また、ざ瘡様皮疹のgradeと体重及び体表面積の間にはいずれも有意な正の相関が認められた。したがって、体重や体表面積の大きい患者が抗EGFR抗体薬による治療を開始する際には、皮膚障害について注意深く観察し、予防的あるいは早期からの皮膚障害対策を検討する必要があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度の後ろ向き臨床研究においては、各要因と皮膚障害との関連性について検討を行ったが、当初計画していたリスク因子の解析までは行うことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、後ろ向き観察研究でこれまでの各要因と皮膚障害との関連性に加え、リスク因子の解析まで行う予定である。また、残りの3年間で以下の前向き観察研究について進めていく。 ・抗EGFR抗体による皮膚障害の定量的評価に関する前向き臨床研究 がん薬物治療として、抗EGFR抗体を初めて使用する大腸癌患者を対象とし、前向き観察研究を行う。 1)評価内容及び方法:①皮膚状態の評価には、経皮水分蒸散量(皮膚バリア能の指標)を用いる。②皮膚障害では、抗EGFR抗体によるがん薬物治療で特徴的に見られるざ瘡様皮疹の発現の有無及び程度について評価を行う。皮膚障害の程度は、がん薬物治療で用いられている有害事象共通用語規準に基づき、gradeを評価する。 2)解析方法:①抗EGFR抗体による皮膚障害と皮膚状態との関連性(主要評価項目)については、皮膚障害の有無により、対象患者を2群に分類し、各群での皮膚状態(経皮水分蒸散量)を比較して、皮膚障害と皮膚状態との関連性について明らかにする。②抗EGFR抗体使用後の皮膚状態の経時的変化(副次評価項目)については、抗EGFR抗体開始後の各患者における皮膚状態(経皮水分蒸散量)を経時的に測定し、抗EGFR抗体の投与に伴う皮膚状態の変化を明らかにする。③皮膚障害発現のリスク因子の解析(副次評価項目)については、皮膚障害の程度を目的変数、抗EGFR抗体開始時における各患者の皮膚状態(経皮水分蒸散量)及び患者背景(年齢、性別等)を説明変数として解析を行い、各因子が皮膚障害発現のリスク因子になるか否かを明らかにする。④外用剤使用後の皮膚状態及び皮膚障害の変化(副次評価項目)は、外用剤(保湿剤、ステロイド剤)使用前後における各患者の皮膚状態(経皮水分蒸散量)及び皮膚障害の変化についてそれぞれ解析を行い、外用剤使用による皮膚状態及び皮膚障害の変化を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
参加を予定していた日本薬学会 第140年会(会場集合型開催)が中止となり、誌上開催となったために使用額が減少した。
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