最終年度は、前年度に検討した抗EGFR抗体薬投与後の皮膚状態の経時的変化に加え、症例数を集積して対象患者を皮膚障害の程度により2群に分類し、抗EGFR抗体薬による皮膚障害と皮膚状態との関連性について検討を行った。
【方法】対象患者は、抗EGFR抗体薬を初めて使用する大腸がん患者12名とし、前方視的に検討した。評価項目は、ざ瘡様皮疹のgrade、皮膚状態(経皮水分蒸散量)とし、投与後6週目まで観察した。 【結果】はじめに、抗EGFR抗体薬開始後の各患者における皮膚状態を経時的に測定し、抗EGFR抗体薬投与に伴う皮膚状態の変化について検討を行った。その結果、顔・胸・背中の経皮水分蒸散量は初回投与時と比較して、投与6週目においていずれも有意に高い値を示した。次に、評価期間中でのざ瘡様皮疹の最大gradeにより、対象患者を2群に分類し、各群での患者背景を比較した。その結果、「Grade 2以上」の患者では「Grade 1以下」の患者と比較して、身長と体重がいずれも有意に大きかった。また、評価期間中でのざ瘡様皮疹の最大gradeにより、対象患者を2群に分類し、各群での皮膚状態を比較した。その結果、「Grade 2以上」の患者では、「Grade 1以下」の患者と比較して、顔(投与2週目)・胸(初回投与時、投与2週目、投与6週目)・背中(投与2週目)の経皮水分蒸散量はいずれも有意に高い値を示した 。なお、ざ瘡様皮疹がGrade 2以上となった時期は全て投与4週目以降であった。 【考察】本研究の結果から、抗EGFR抗体薬によるがん薬物治療を行う際に、投与開始時に身長や体重が大きい患者、あるいは投与2週目に蒸散量が高い患者では皮膚障害が重篤化する可能性が示唆された。
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