研究課題
本研究の目的は、中性域を含む広範囲のpHの水溶液に溶解し、親化合物の構造に影響されずに代謝活性化される「水溶性プロドラッグ修飾基」を開発することである。2020年度は、前年度発見した3,3-ジメチルグルタル酸型の修飾基よりも、さらに中性に近いpHの溶液中での水溶性向上を目指し、分子形において高い溶解性をもつエチレングリコール型の修飾基を導入したプロドラッグの合成および評価を試みた。モデル化合物としてインドメタシンを用い、設計したプロドラッグ修飾基を導入した後、代謝活性化能と水溶性の評価を行った。合成においては、ダイマー型の副生成物が確認されたものの、条件検討により目的のエチレングリコール型のプロドラッグを中程度の収率で得た。水溶性においては、モノエチレングリコール型は水溶性を向上させる能力が低かったが、トリエチレングリコール型の長鎖の修飾基にすることで中性域の水溶液における水溶性を大幅に向上させることが可能となった。しかしながら、修飾基が長鎖になると代謝活性化能が低下するという問題点が生じた。この問題を解決すべく、本プロドラッグの主要な代謝活性化酵素であるカルボキシルエステラーゼとエステル基質の構造活性相関の調査を行った。その結果、エステル基質の近傍のアルコキシ基の立体障害により代謝速度が大きく低下すること、自壊性のリンカーを導入したジエステル型とすることで代謝速度が増加すること、電子密度を低下させることでエステル自体の反応性を高めると代謝速度が増加することを見出した。この結果に従い、次年度はさらに代謝活性化能の高い修飾基を設計する予定である。
3: やや遅れている
これまでの反応条件では副生成物が多くなってしまい、条件検討に時間がかかったため、予定していたよりも合成した化合物の数が少なくなってしまった。そのため、代謝活性化が効率良く行われる化学構造を十分に探索できていない。
引き続きエチレングリコール型の修飾基の構造最適化を行う予定である。終わり次第、いくつかの基質を用いて、本修飾基が多くの基質に適応可能かどうかを試験する予定である。
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Drug Metabolism and Pharmacokinetics
巻: 38 ページ: 100391~100391
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European Journal of Pharmaceutical Sciences
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