研究課題/領域番号 |
19K16424
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研究機関 | 明治薬科大学 |
研究代表者 |
永井 純子 明治薬科大学, 薬学部, 助教 (50828142)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 抗コリン作用負荷評価尺度 / 副作用自発報告データベース / 化学構造 / レセプトデータベース |
研究実績の概要 |
令和3年4月より部署が異動になったことにより、研究に対するエフォート率が大幅に減少するとともに、これまで使用していた研究資源を新たに自ら購入・契約する必要が生じた。そのため、予算の使用や研究計画の再考と研究環境の構築をまず実施することになった。 これらの研究環境が整うまでの間に、現状の環境で実施可能かつ研究課題の解決の一助になるような解析の計画を立案し実施した。無料で利用可能な副作用自発報告データベースから非重篤かつ客観性が乏しい副作用である抗コリン性副作用がシグナルとして検出可能かどうかを検討した。日本のデータベース(JADER)では重篤な副作用症例が多くFAERSでは一般消費者からの報告が多いの報告があるため、2つの副作用自発報告データベースをそれぞれ解析し比較した。 抗コリン作用性副作用は認知機能障害・錯乱状態・譫妄・便秘・口内乾燥・ドライアイ・頻脈・口渇・尿閉の9種類とし、これらを中枢性副作用(CNS)と末梢性副作用(PNS)、9種類全ての抗コリン作用性副作用(ALL)の3種類に定義し解析した。データベース全体に対するこれらの副作用と登録されている薬物のペア数の割合を調べた。CNS、PNS、ALLについて各薬物の報告オッズ比(ROR)を算出し、大きなRORを示す薬物を観察した。また、高齢者において副作用の危険性が懸念される医薬品をまとめたBeers Criteria(2019年)に掲載されている抗コリン薬を用いて、各薬物のRORの評価およびデータベース間の結果の比較を行った。その結果、各データベースには抗コリン作用性副作用の症例が一定数報告されており、大きなRORを示した薬物の多くは代表的な抗コリン薬であった。2つのデータソースの解析結果には相違点が認められた。以上の結果は、「日本薬学会第142年会」にて発表を行うとともに、PLOS ONEに掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2021年度は、異動先の新部署における業務のエフォート率が所属機関により50%と設定されたため、以前と比較して研究可能な時間が大幅に減少したことが大きな理由である。加えて2020年度までの所属研究室にて使用していた各種研究設備やソフト等を、新たに自ら契約・購入し、研究の実施が可能な環境を整えることに時間を要した。 また、本研究で使用予定のNDBの提供を受けるために、2021年1月に申請を行い同年3月の審査を受けたが、決定通知は予定の4月より3か月遅れの7月であった。さらにその後、部署異動による利用場所の変更申請を行ったためデータを受領できたのは10月末であった。
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今後の研究の推進方策 |
2022年9月より所属機関の研修制度を利用して研究留学へ1年間行く予定であるため、それに伴い本研究は一時中断する予定である。2021年度に研究環境や必要なリソース等の入手が完了したため、帰国後の研究再開後は当初の計画に従い研究を進めていく。 まず、以前構築した化学構造を用いた抗コリン作用負荷評価尺度の予測モデルに対して、2021年度に得られた情報を加えて改良を行う。さらにいくつかのモデル構築手法や利用する変数を変化させるなどにより、複数パターンの予測モデルを構築する。 2021年度にNDBを受領できたため、データ構造を確認しながら記述統計による基礎的な情報の集約と可視化を行う。その後、高齢がん患者の副作用に関する解析を実施し、従来の仮説の検証を行う。最終的には、抗コリン作用負荷評価尺度の予測モデルをあてはめ評価を行う計画であることから、評価用のデータセットを構築していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
部署異動に伴い研究計画の大幅な遅れが生じたため。 NDBの手数料は当初不要とのことであったが、2022年3月に厚生労働省より手数料を支払う必要があることが判明したとの連絡があり、2023年度に支払う予定である。
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