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2019 年度 実施状況報告書

神経伝達物質と反応するメチルグリオキサールの治療抵抗性統合失調症への関与

研究課題

研究課題/領域番号 19K16425
研究機関明治薬科大学

研究代表者

小池 伸  明治薬科大学, 薬学部, 助教 (70751014)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2021-03-31
キーワードメチルグリオキサール / 神経伝達物質 / 精神疾患 / 終末糖化産物 / LC-MS/MS / メイラード反応
研究実績の概要

糖代謝の過程で産生されるカルボニル化合物であるメチルグリオキサールは、それ自体に神経毒性があり、長期間生体内に貯留することでタンパク質のAGEs化を促進することが知られている。この現象が神経変性疾患や精神疾患に関連することが報告されている。一方で、メチルグリオキサールはグルタチオンやシステインなどの生体内低分子化合物との反応性も知られているが、脳内における神経伝達物質とメチルグリオキサールとの反応性はあまり知られておらず、疾患との関係も十分な検討が行われていない。この背景を踏まえ本研究では、メチルグリオキサールと神経伝達物質との反応性の検討を行った。in vitroの実験系の結果、メチルグリオキサールはセロトニン、ドパミン、ノルアドレナリン、アドレナリンと37℃、中性条件下において高い反応性を示すことが分かった。また、これらの反応の結果得られた反応生成物をLC-MS/MSで解析し、その構造を推定した。このうち、メチルグリオキサールとノルアドレナリン及びアドレナリンの反応で生成した化合物が複数確認され、それぞれこれまでの報告にない新規の化合物であった。一方で、メチルグリオキサールはグルタミン酸やGABAとは反応性を示さなかった。
さらに、海馬由来神経細胞であるHT22細胞またはラット副腎髄質褐色腫由来のPC12細胞を用いた実験で、メチルグリオキサールの添加によって生じ得る細胞内の神経伝達物質濃度の変動や反応生成物の産生、それらの取り込み及び放出への影響も解析した。その結果、メチルグリオキサールは神経細胞内においても、神経伝達物質と反応し、それらの反応生成物が産生され得ることが示唆された。現在は、マウス脳におけるこれら反応生成物の解析を進めている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

これまでにメチルグリオキサールはドパミンと反応することが知られていた。これらの反応生成物の構造も明らかになっており、本研究でも同様の結果が得られた。その一方で、ノルアドレナリンやアドレナリンとメチルグリオキサールとの反応は知られていなかったが、本研究で両者が非常に高い反応性を有することが明らかになり、それらの構造も推定できた。これらの実験を基に、マウス脳を用いた実験も順調に進行中であり、神経系の疾患モデルマウス等で、in vitroで明らかとなっている反応生成物の同定を行う準備をしている。

今後の研究の推進方策

今後は、マウス脳を用いた実験を中心に行う予定である。具体的にはマウス脳にメチルグリオキサールを投与し、in vitroで得られた反応生成物の同定を行う。また、メチルグリオキサール代謝酵素であるグリオキサール1の欠損は不安様行動を示すことが知られているが、このような疾患モデルマウスの脳において、メチルグリオキサールと神経伝達物質が反応して生成する代謝物の解析も行っていく予定である。

次年度使用額が生じた理由

計画していた細胞培養実験が予定より早く決着したため、その分が繰り越しとなった。次年度の動物実験用の費用として用いる予定である。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2019

すべて 学会発表 (6件)

  • [学会発表] 疾患モデルマウスを用いたカルボニルストレス性統合失調症に関する研究2019

    • 著者名/発表者名
      木船陽介、小池 伸、鈴木俊宏、石田洋一、鳥海和也、新井 誠、小笠原裕樹
    • 学会等名
      日本薬学会第139年会
  • [学会発表] グリセリン製剤中において生成されるメチルグリオキサールの測定2019

    • 著者名/発表者名
      杉浦 江、小池 伸、鈴木俊宏、小笠原裕樹
    • 学会等名
      日本薬学会第139年会
  • [学会発表] 疾患モデルマウスの海馬に蓄積するAGEs含有タンパク質の解析2019

    • 著者名/発表者名
      笠原 桜、小池 伸、鳥海和也、新井 誠、鈴木俊宏、小笠原裕樹
    • 学会等名
      第92回 日本生化学会大会
  • [学会発表] カルボニルストレス性統合失調症患者由来 iPS細胞の解析2019

    • 著者名/発表者名
      堀内泰江, 石川 充, 小幡菜々子, 畠中真依, 許絲茵, 小池 伸, 鳥海和也、宮下光弘、宮岡祐一郎, 小笠原裕樹, 勝田奈那, 永井竜児, 岡野栄之, 糸川昌成, 新井 誠
    • 学会等名
      第29回日本メイラード学会
  • [学会発表] Glo1遺伝子欠損とビタミン B6欠乏がマウスの精神行動に与える影響2019

    • 著者名/発表者名
      鳥海和也、鈴木一浩、小池 伸、宮下光弘、堀内泰江、吉川 茜、小笠原裕樹、糸川昌成、新井誠
    • 学会等名
      第29回日本メイラード学会
  • [学会発表] メチルグリオキサールに着目した統合失調症の AGEs上昇メカニズムの検討2019

    • 著者名/発表者名
      鈴木一浩、鳥海和也、宮下光弘、堀内泰江、吉川 茜、小池 伸、小笠原裕樹、鷲塚伸介、糸川昌成、新井 誠
    • 学会等名
      第29回日本メイラード学会

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公開日: 2021-01-27  

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