研究課題/領域番号 |
19K16427
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研究機関 | 鈴鹿医療科学大学 |
研究代表者 |
榎屋 友幸 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 准教授 (60803260)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | トロンボモジュリンα / 敗血症 / 播種性血管内凝固症候群 / LPS / S100A8 / S100A9 / PLA2G2A |
研究実績の概要 |
TMαが、CPA3とET-1との反応機構の調整に寄与する可能性があると仮説を立て、実験系を構築しようと試みたが、活性を持つCPA3の入手やET-1分解産物の測定が困難であるため、実験を中断し方針を切り替えた。我々の研究成果から、TMαがLBPと相互作用している可能性が見出されていたため、TMαとLBPとの相互作用を検証する方針とした。LPSは血漿中でLBPと結合し、LPS-LBP複合体がCD14と相互作用することでTLR4受容体に作用し、IL-6産生を促す。TMαがLPSと相互作用することは知られているが、LPSとLBPとの相互作用への影響は明確にされていない。そこで、LAL assayを用いて、LPSとLBPとの相互作用への影響を調査した結果、LBPによるエンドトキシン活性の抑制効果に影響が認められなかった。このことから、TMαはLPSと相互作用するが、LPSとLBPとの相互作用に対しては影響しないことが示唆され、TMαのLPSを介した抗炎症作用は、別の機序があると考えられた。 TMαとS100A9の相互作用について検討を行った。S100A9は、血漿中ではS100A8とヘテロダイマーを形成していることが報告されている。そこで、S100A8/S100A9ヘテロダイマーとTMαをヒト血漿に添加し、免疫沈降を行い検証した。その結果、TMαとS100A8/S100A9ヘテロダイマーが血漿中で相互作用していると考えられた。また、Caイオンを添加したPBS中において、TMαとS100A8/S100A9ヘテロダイマーとの相互作用が確認できたため、TMαはS100A8/S100A9ヘテロダイマーと直接的に相互作用していると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の影響により、研究へのエフォートが低下したため。
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今後の研究の推進方策 |
LBPとCD14との相互作用に対するTMαの役割を調査する。これまでにTMαはLPSとLBPとの相互作用に対して影響を示さないことが示唆された。しかしながら、TMαはLPSに対する抗炎症作用を有していることはこれまでの動物実験から明らかなことであり、他のメカニズムが存在すると考えられた。そこで、TMαはLPS-LBP複合体とCD14との相互作用を阻害するという仮説を立て、現在、in vitroまたはin vivoでの検証実験を行う予定である。
TMαのS100A8/S100A9ヘテロダイマーへの機能的関わり、特に炎症性反応への影響を調査する。S100A8/S100A9ヘテロダイマーは、toll-like receptor 4(TLR4)を介してTリンパ球などに作用し、炎症性サイトカインの放出を促すことが報告されている。このS100A8/S100A9ヘテロダイマーの作用に対して、TMαは抑制的な作用を有している可能性があると考えており、細胞実験にて確認していく予定である。
PLA2A2GとトTMαの相互作用を、Native-PAGEおよび免疫沈降法によるin vitro実験にて検証し、相互作用を確認できた際には、機能的な影響を生化学的実験、in vivo実験により検証する予定である。
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