これまでの本研究の結果より、S100A8/S100A9ヘテロダイマー及びPLA2G2Aがトロンボモジュリンα(TMα)と直接的に相互作用することを見出した。2022年度では、それぞれのタンパク質に対するTMαの機能的影響を検証した。 1.PLA2G2Aに対するTMαの機能的影響 分泌型PLA2活性用のAssay kitを用いて、PLA2G2AのPLA2活性を測定した結果、TMαは、PLA2G2AのPLA2活性には影響しないことが示唆された。PLA2G2Aは、インテグリンαVβ3(ITGαVβ3)のリガンドとして炎症反応を引き起こすことが知られているため、PLA2G2AとITGαVβ3の相互作用に対するTMαの影響を検証した。His-tag plateとHis-tagged PLA2G2Aを用いてfunctional ELISA assayを行った。その結果、ITGαVβ3は濃度依存的にPLA2G2AとTMαの相互作用を阻害した。TMαは、PLA2G2Aと直接的に相互作用し、PLA2G2AとITGαVβ3との相互作用を阻害することで、抗炎症作用を発揮する可能性が示唆された。 2.S100A8/S100A9ヘテロダイマーに対するTMαの機能的影響 S100A8/S100A9ヘテロダイマーは、RAGEなどの受容体のリガンドとして炎症反応を引き起こすことが知られている。そこで、S100A8/S100A9ヘテロダイマーと各受容体との相互作用を検証するため、His-tag plateとHis-tagged S100A8/S100A9ヘテロダイマーを用いてfunctional ELISA assayを構築した。この実験系を用いて検証した結果、S100A8/S100A9ヘテロダイマーとRAGEとの相互作用に対するTMαの影響は認められなかった。
|