研究課題/領域番号 |
19K16431
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
大竹 裕子 近畿大学, 薬学部, 助教 (40803771)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 吸入用ナノ粒子 / パクリタキセル / ビーズミル / 湿式破砕 / 肺がん治療 |
研究実績の概要 |
本年度は、ナノサイズまでの破砕が可能なビーズミル法を基盤とし、肺がん吸入用治療薬としての吸入用パクリタキセル(PTX)ナノ粒子(PTX-NPs)の創製に向けて、添加物の種類・添加割合・ビーズミル条件が異なる種々のナノ粒子を調製し、ナノ粒子の粒子径測定および粒子形状評価の結果に基づいて処方・調製条件の最適化を行った。 添加物の種類について、破砕効率を高める添加剤であるメチルセルロースの重合度を変化させることで、破砕効率が変化することが明らかとなり、重合度が高過ぎても低すぎても破砕効率が低下することが示された。また、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを添加することでナノ化に伴う凝集性を制御することに成功し、ナノ粒子の分散性が維持できることを見出した。 ビーズミル条件については、ビーズの種類・破砕方法(乾式または湿式破砕法の選択、破砕強度)について検討し、ジルコニアビーズおよび上記添加物を含む試料懸濁液を細胞破砕装置を用いた湿式破砕法によりPTXの粒子径をナノサイズ(約 100-200 nm)にすることが可能であることを見出した。 今回検討ができなかった添加物の添加割合は、破砕効率に関与するメチルセルロース溶液について様々な濃度で添加することでナノ粒子のさらなる微細化を試みる。これらの検討により最適化した吸入用PTX-NPs懸濁液を経肺投与することで、体内動態および治療効果について検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本年度は当初の研究実施計画どおり、『吸入用パクリタキセルナノ粒子の調製条件の確立』『吸入用パクリタキセルナノ粒子の粒子形状・粒子径』の計2項目に着手し、それぞれ未だに完結できていないものの添加物選択およびビーズミルの条件設定など部分的に成果を残すことができた。ただし、抗がん剤を使用する環境整備が順調にいかず、研究の遅延が認められた。以上の点から評価した。
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今後の研究の推進方策 |
来年度には『吸入用パクリタキセルナノ粒子投与時のin vivo体内動態および肺傷害性の評価』『肺転移癌モデルマウスを用いた吸入用パクリタキセルナノ粒子の治療効果』の計2項目、再来年度には『ヒト培養細胞を用いた吸入用パクリタキセルナノ粒子のin vitro膜透過性・細胞毒性評価』『吸入用パクリタキセルナノ粒子の吸入特性評価』の計2項目について検討していく予定である。また、ナノ粒子の粉末化を目的として、ナノ結晶分散液の粉末化方法および付着凝集性改善についても検討したいと考えている。
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