昨年の課題であった吸入用パクリタキセル(PTX)ナノ粒子(PTX-NPs)の調製時における添加物の最適化について再度検討を行った。吸入製剤の添加物として使用されるとともに添加濃度により粘度変化を示すカルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸ナトリウムを選択した。さらに、吸入用PTX-NPs粉末製剤化に向けて分散補助剤であるL-ロイシンを添加し、湿式ビーズミル処理によりPTX-NPs懸濁液の調製を行った。その結果、2% PVA添加により、粒子径約200 nmを示すPTX-NPs懸濁液の調製に成功し、PTX-NPs懸濁液中のPTX量は仕込み量とほぼ同量であった。PVA添加による粘性増加により、ビーズとPTXの破砕効率が向上したため、PTXのナノ化および高収率化に成功したと考えられる。上記のPT-NPs懸濁液を用いて、マウスに経肺投与した際の体内動態評価を行った。その結果、投与1時間後において、肺におけるPTXの存在が確認されたものの、血液中および腎臓、肝臓、脾臓、小腸にはPTXの存在を確認することができず、PTX-NPsは投与1時間後も肺に局在していることが示された。今後、投与数時間後における体内動態評価を進めるとともに、肺転移がんモデルマウスを用いた際の治療効果評価を行い、吸入用PTX-NPs製剤の有用性について示していきたい。
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