研究課題
脳梗塞には、血栓溶解薬の組織プラスミノーゲンアクチベータ (tissue plasminogen activator; t-PA) が劇的な治療効果を示す。しかし、脳梗塞発症からわずか4.5時間が過ぎると、脳血管が脆くなるため、出血リスクの観点からt-PAを使用することができなくなる。このt-PAの治療制限時間の短さが、脳梗塞患者増加の大きな要因となっている。我々は、この時間制限を克服するために薬物伝達システムに着目し、t-PAを微小なバブルに封じ込み、血栓部位でのみt-PAの効果を発揮させる方法で出血リスクを減らせると考えた。本研究は、「マイクロバブル化したt-PAが脳出血誘発リスクを低下させ、更にはt-PA治療の制限時間を延長することができるのか」を、脳梗塞モデルマウスを用いて明らかにし、t-PA治療を発展化させるための基盤を確立することを目的としている。本年度はt-PAとマイクロバブル化したt-PAの治療効果の違いについて脳梗塞モデルマウスを用いて検討した。脳梗塞モデルマウスの作製は2時間中大脳動脈を閉塞し、再灌流後に薬物投与を行った。その結果、マイクロバブル化は局所での効果を強める薬物伝達システムの性質を持つため、通常では効果を示さない低濃度のt-PAでも治療効果を示した。つまり、マイクロバブル化により、最小限の投与濃度で十分な治療効果を発揮することが明らかとなった。t-PA濃度の低用量化に成功したことから、脳梗塞モデルマウスにおいて脳出血リスクが軽減することが期待できる。次年度は、マイクロバブル化したt-PAの治療可能時間がどれだけ延長可能かを検討する予定である。昨年度の研究成果より、本モデルマウスは脳梗塞発症後4時間目以降にt-PAを投与すると脳出血を誘発することを明らかにしているため、まずは4時間目の投与を基準に検討を行う。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、まず、マイクロバブル水溶液が脳梗塞モデルマウスに対して毒性を示さないことを確認することができ、t-PAのマイクロバブル化に進むことができた。次に、脳梗塞モデルマウスを用いて、t-PAとマイクロバブル化したt-PAの有効濃度の違いについて検討した。その結果、マイクロバブル化は局所での効果を強める薬物伝達システムの性質を持つため、通常では効果を示さない低濃度のt-PAでも治療効果を示すことが明らかとなった。
マイクロバブル化により、最小限の投与濃度で十分な治療効果を発揮することが明らかとなった。t-PA濃度の低用量化に成功したことから、脳梗塞モデルマウスにおいて脳出血リスクが軽減することが期待できる。次年度は、マイクロバブル化したt-PAの治療可能時間がどれだけ延長可能かを検討する予定である。昨年度の研究成果より、本モデルマウスは脳梗塞発症後4時間目以降にt-PAを投与すると脳出血を誘発することを明らかにしているため、まずは4時間目の投与を基準に検討を行う予定である。
新型コロナウイスルの流行に伴い、動物舎の使用が制限される期間があった。その時期に購入予定であった試薬の予算を確保していたが、結局本年度中に使用する機会がなかった。現在は動物舎入室の制限も解除されており、次年度は計画的に使用可能である。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Life Sci.
巻: 252 ページ: 117665
10.1016/j.lfs.2020.117665.