慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease: COPD)患者の20~50%は、情動障害・認知機能障害などの中枢性合併症を併発する。この中枢性合併症は、COPD患者の予後不良とQOL(Quality of Life)低下の重大な危険因子となるが、その対策は不十分である。また、エラスターゼ誘発COPDモデルマウスではSodium Fluorescein(Na-F)とEvans blue albumin(EBA)脳移行量が増加することが明らかとなっている。そこで本研究では、COPD病態進行に連動した血液脳関門の障害機構を解明することでCOPDの中枢性合併症の回避・防御法の構築を企てた。 抗コリン薬の長期使用が認知機能低下を誘発する危険性が指摘されており、COPDの薬物治療においては4級アンモニウム塩抗コリン薬が頻用されている。そこで、本年度はCOPDモデルマウスを用いて4級アンモニウム塩抗コリン薬の脳内移行性を評価した。ブタ膵エラスターゼ(PPE)をマウスに気管支内投与し、PPE誘発COPDモデルマウスを作製した。PPE投与3週後のCOPDモデルマウスの鎖骨下静脈より3H-Methyl Scopolamineを投与し経時的な3H-Methyl Scopolamineの脳移行性を測定した。PPE投与群の4級アンモニウム塩抗コリン薬の脳内移行性はPBS投与群(対照群)と比較して同程度であった。COPDモデルマウスのオープンフィールド試験においてもPPE投与群の自発運動量が対照群と比較して変化が認められなった。PPE投与6週間後においては、PPE群の自発運動量が対照群と比較して減少傾向を示した。
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