研究課題
抗体医薬品はがんや自己免疫疾患領域の治療に不可欠であり、今後も市場規模の拡大が予想されている。抗体医薬品は標的特異性が高く副作用が少ないメリットがある一方で、患者体内で異物とみなされて抗薬物抗体(anti-drug antibodies: ADAs)が産生されるデメリットがある。これを回避するためにヒト抗体を医薬品として用いているにもかかわらずADAsの産生が報告されており、抗体医薬品の有効性と安全性を確保するために、さらなる方策が求められている。本研究課題は、我々がこれまでに報告している「構造安定性が高い蛋白質抗原ほど抗体産生が抑制される」という理論が抗体分子にも応用できるかを検証し、ADAs産生抑制法開発のための研究基盤を確立することを目指す。研究期間全体の実施計画は以下の通りである。1.マウスIgG抗体のFab部分の定常部をヒト抗体のアミノ酸配列に置換したキメラFabの酵母を用いた調製系を構築する。2.キメラFabをモデル蛋白質としてアミノ酸置換による変異体を調製し、安定性の指標のひとつである変性中点温度(Tm)をDSC(示差走査型カロリメトリー)で測定し熱安定性を評価する。3.プロテアーゼ消化実験を行い、変異体のプロテアーゼ耐性を評価する。4.安定性が異なるFabをマウスに投与した際の抗体産生量について解析する。初年度は実施計画の1、2、3(主に2)を行った。安定化予測プログラムやこれまでに安定化に成功したことがあるcavity fillingの手法による変異候補部位の探索を行い、16個の変異体デザインと調製を進めている。DSC測定まで終了した8変異体のうち3変異体は野生型よりもTm値が上がっていたが、プロテアーゼ耐性については野生型と同程度であった。
2: おおむね順調に進展している
キメラFab野生型のDSCの結果から熱安定性がかなり低いことが判明したため、これよりも不安定な変異体は発現・精製が困難になることが予想され、安定化体の作製を優先することにした。これまでに1アミノ酸置換によりTm値が上昇した変異体が複数得られており、おおむね順調に進展していると考えている。
初年度に1アミノ酸置換によりTm値が上昇した変異体は得られたが、抗体産生量との相関が指摘されているプロテアーゼ耐性については期待したほどの結果が得られなかった。そこで初年度に見出した変異部位を複数組み合わせた変異体をさらに作製し、引き続き、安定化体の調製を行う。調製した変異体の中から免疫実験に適したものを選択し、それらをマウスに腹腔内投与した後の抗体産生量を測定し、抗原の安定性との相関性について解析する。
各種試薬やプラスチック消耗品などを節約して使用したことで次年度使用額が発生した。次年度も引き続き、物品費や旅費として使用予定である。
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