本検討では以前の検討で得られた非ステロイド性抗炎症薬 (NSAIDs)の併用がシスプラチン (CDDP) 起因性腎障害 (CIN)出現のリスク因子であるという仮説の検証、ならびに作用機序が異なるNSAIDsが一律にCINに悪影響を及ぼすのかについて検討した。 まず、NSAIDsの併用がCINを悪化させる因子かをメタ解析を用いて検討した。検索データベースとしてPubMed、Web of Science、Google Scholarを用いた。選択基準に適合した7報をForrest plotで解析した結果、NSAIDs併用によるCIN増悪のオッズ比は1.9 (95%CI = 1.23-2.95、I2 = 44%) であった。本結果よりNSAIDsの併用がCINを悪化させることが明らかとなった。 基礎研究では正常ラット腎細胞株であるNRK-52E細胞を用い、17種のNSAIDsがCDDPによる細胞生存率低下に及ぼす影響をMTT assayで評価した。その結果、細胞障害スクリーニングにより、シクロオキシゲナーゼ(COX)非選択性NSAIDsであるフルルビプロフェンがCDDPによる細胞障害を最も悪化させること、また、COX-2選択的阻害薬であるセレコキシブが細胞障害を最も軽減させることが明らかとなった。一方で、COX-2選択的であるロフェコキシブが細胞障害に影響を与えなかったことから、NSAIDsのCOX選択性が腎障害に与える影響は少ないと考えられた。セレコキシブがCINに対して保護的に作用することが明らかとなったため、今後In vivoでの検討ならびにその機序について検討する予定である。
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