研究実績の概要 |
本検討では非ステロイド性抗炎症薬 (NSAIDs)が一律にシスプラチン(CDDP)起因性腎障害(CIN)に悪影響を及ぼすのかについて検討している。 正常ラット腎細胞株であるNRK-52E細胞を用いたMTT assayによる薬剤スクリーニングによりフルルビプロフェンがCDDPの細胞障害を増悪させ、セレコキシブが軽減させることが明らかとなった。続いてセレコキシブによる障害軽減機序について検討を行った。セレコキシブの添加により抗酸化マーカーであるHo-1, Sod1, Nrf2の上昇が認められ抗酸化作用が示されたが、superoxide scavengingには影響しないことが明らかとなった。また、オートファジーにセレコキシブが与える影響について検討した。その結果、セレコキシブの併用によりCDDPにより低下したAtg5, Atg7,およびLc3といったオートファジーマーカーの正常化が確認され、セレコキシブがオートファジーを介してCINを軽減することが示された。一方、腎臓内でのCDDPの輸送を担う薬物トランスポータの発現量はセレコキシブの併用により変動しなかった。 上記の結果からin vitroではセレコキシブが抗酸化作用およびオートファジーによりCINを軽減する可能性が示唆された。 また、in vivoにおいては5 mg/kgのCDDPをWistarラットに腹腔内投与しモデルラットを作成した。CDDPの投与5日目のKim-1値は有意に上昇したが、セレコキシブの投与がその上昇を正常化したことから、セレコキシブによるCIN軽減作用が確認された。一方、in vivoではSod1, Atg5量がセレコキシブ添加により変動しなかった。このことからin vitroとin vivoではセレコキシブによるCIN軽減機序が異なることが示唆された。
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