研究課題/領域番号 |
19K16439
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
八島 秀明 群馬大学, 医学部附属病院, 助教 (60773512)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 抗菌薬 / 効果判定 / メタボローム解析 / プロテオーム解析 / TDM |
研究実績の概要 |
本課題の目的は抗菌薬投与前もしくは投与後早期に臨床効果に予測・評価可能な因子の探索、およびそれらの因子を組み合わせた臨床効果判定を行う数理モデルの構築である。 細菌感染が血液中で起こっている菌血症患者の血液検体の宿主および細菌由来のタンパク質、生体代謝物を網羅的に分析し、臨床効果を関連する因子を抽出するとともに、投与された抗菌薬および感染症に関連して投与された薬剤の血中薬物濃度の測定の実施を計画している。 1)In vitro 系における抗菌薬の効果と関連する因子の網羅的探索臨床で原因菌として頻度高く分離され、耐性化が問題となっている黄色ブドウ球菌および緑膿菌を対象に、感受性が異なる菌種へ抗菌薬の曝露を行い、曝露前後のサンプル中のペプチド、タンパク質、タンパク質複合体、代謝産物および他の生物学的に関連する分子を高速液体クロマトグラフ―タンデム質量分析装置(LC-MS/MS)にて分析し、プロテオミクスおよびメタボロミクスの手法にて探索的に解析を行う。上記2菌種について十分なデータが集まり次第、別の菌種についても同様の検討を行っていく。後述の臨床サンプルの測定では測定感度が不足する可能性があるため、細菌の減少プロファイルと相関性が高い分子については、予測因子の候補としてELISA法や核酸をターゲットとした感度を上げた測定系の確立も行う。
2)菌血症患者の血液サンプルを用いた感染症の臨床効果に関連する因子の網羅的探索宿主の因子および抗菌薬の適正使用についての因子を探索する目的で血液培養にて細菌が検出された患者を対象に臨床研究を計画している。臨床上の検査を目的に採血された血清の残滓に対して、LC-MS/MSにて分析し、プロテオミクスおよびメタボロミクスの手法にて解析を行う。このとき、治療に用いた抗菌薬および関連薬剤の血中薬物濃度も測定する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1)In vitro 系における抗菌薬の効果と関連する因子の網羅的探索 高速液体クロマトグラフ―タンデム質量分析装置(LC-MS/MS)にて実施するプロテオミクスの手法の確立に着手している。血液中のアルブミン等による低発現タンパク質の感度低下を防ぐための検討として、TripleTOF 6600を用いてSWATH解析で測定する系を実施することを決定した。現在はサンプルの前処理条件について検討している。 2)菌血症患者の血液サンプルを用いた感染症の臨床効果に関連する因子の網羅的探索 効果に関連する因子の一つである血液中の抗菌薬濃度の測定法について実施した。臨床現場では一般的に測定しない抗菌薬であるシプロフロキサシンの測定系を確立した。また、昨年度測定系を立てたドリペネム、メロペネムについて血液検体中の安定性を向上させる系へ修正した。 上記の状況を踏まえ、本研究はやや遅れた状態となっている。新型コロナウイルスの蔓延により、大学全体で研究活動が禁止されていた時期が長く、特に感染性の菌を取り扱う検討1)については、研究を進めることが難しい状況であった。今後の状況と合わせて研究期間の延長を考慮する。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に引き続き、In vitro 系における抗菌薬の効果と関連する因子の網羅的探索の測定系の確立に着手していく。候補の分子の探索が完了したのちに、予測因子の候補としてELISA法など感度を上げた測定系の確立を行う。 測定対象が定まり次第、臨床研究の申請を行い、患者血清中の因子の解析を開始する。 緑膿菌を対象に感染症治療で使用される薬剤として、コリスチンの血中濃度の測定系を作成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの蔓延により、大学全体で研究活動が禁止されていた時期が長く、特に感染性の菌を取り扱う検討については、研究を進めることが難しい状況であった。そのため、In vitro 系における抗菌薬の効果と関連する因子の網羅的探索について、測定系の条件検討がまだ完了しておらず、菌種ごとのプロファイルの取得の段階まで到達していないため、次年度使用金が生じた。 測定系が確立した後に経時的なプロファイルを菌種ごとに取得する際に、消耗品等でこの金額分が使用がされる見込みである。
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