本研究では、ヒトにおいて、いまだ明らかにされていない抗菌薬投与による腸内フローラの変化が及ぼすCYP3A4代謝薬剤への影響およびそのメカニズムを明らかにすることを目的に、医療データベースを用いて抗菌薬投与に投与に伴うCYP3A4代謝薬剤である直接経口抗凝固薬(DOAC)の薬効・有害作用発現頻度の変化を解析した。さらには、DOACのうち、エドキサバン投与患者における薬物動態を評価した。 これまでに the Swedish National Register Systemを用い、すべてのDOAC服用患者を対象とした解析を実施した。DOACとフルオロキノロン系抗菌薬の併用を曝露とし、出血(脳血管、消化管)の発症率をDOACとDoxycyclineの併用患者群で比較した。解析には、cox regressionを用いたcohort studyによりハザード比(95%信頼区間)を算出する方法を用いた。一方で、出血リスクにはDOACの服用期間などの時間依存性交絡や代謝酵素や薬物トランスポーターの遺伝子変異による個体間変動も影響することが予測されることから、そららの影響を最小限にすることを目的にCase-time-control designにて検証を行った。両研究designにおいてもフルオロキノロン系抗菌薬の併用によるDOACの出血リスクの上昇傾向が確認された。Cohort studyでは抗菌薬投与終了後から抗菌薬の腸内フローラへの影響が正常化するとされる180日までの評価を実施し、抗菌薬投与終了150日までは出血リスクが上昇傾向を示すことを確認した。また、DOACのうち、エドキサバン投与患者の薬物動態の評価を行った。しかし、症例数が少なく変動因子として抗菌薬の併用の影響を評価することはできなかった。
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