研究課題/領域番号 |
19K16444
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
稲垣 孝行 名古屋大学, 医学部附属病院, 薬剤師 (90835406)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | クラリスロマイシン / Mycobacterium avium / 薬剤耐性遺伝子 / 23SrRNA / ARMS法 / LAMP法 / 肺MAC症 / 非結核性抗酸菌 |
研究実績の概要 |
本研究では、遺伝子変異検出法であるARMS法及び等温遺伝子増幅法であるLAMP法を応用し、クラリスロマイシン耐性の有無を判定するARMS-LAMP法を開発することを目的としている。 令和2(2020)年度の研究実施計画は、M.aviumにおけるARMS-LAMP法の増幅時間の短縮と特殊な機器を用いない蛍光強度による目視検出の検証である。M.avium基準株および肺M. avium症患者由来株を使用し、以下の研究成果が得られた。 1.通常、LAMP法にて使用するプライマーセットにループプライマー (LP) を追加した場合、増幅時間を30分以内に短縮することができる。そこでLAMP法プライマー設計支援ソフトによりLPを設計し、変異型検出用プライマーセットにLPを追加してARMS-LAMP法を実施し、増幅時間の短縮の可能性について検証した。M.avium基準株2株および肺M. avium症患者由来株18株の全ての検体で、耐性の有無に関わらずLAMP反応が認められた。従って、ARMS-LAMP法はLPを用いた増幅時間の短縮が可能でないことが判明した。 2.変異型検出用プライマーセットに蛍光目視検出試薬を追加してARMS-LAMP法を実施し、専用の特殊な検出機器を使用せず、紫外線照射装置 (UVランプ) を用いて、目視による検出を検証した。M.avium基準株2株および肺M. avium症患者由来株18株の全ての検体で、耐性の有無に関わらず、全般的に区別しがたい発光現象が確認された。一方で、蛍光目視検出試薬を追加せずにARMS-LAMP法を実施した後に、蛍光灯下で目視による直接検出をM.avium基準株2株および肺M. avium症患者由来株18株を用いて検証した結果、専用の検出機器における濁度の測定結果に相関してLAMP反応液の白濁を目視で確認することが可能であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2(2020)年度の研究目的は、M.aviumにおけるARMS-LAMP法の増幅時間の短縮と蛍光目視検出の検証および、M. intracellulareにおけるARMS-LAMP法に用いるプライマーの設計および臨床分離株を用いたシステムの構築である。令和2(2020)年度の研究実施計画に基づく研究の進捗状況から、下記の理由により、当該年度における達成度については、やや遅れていると考える。 1.ARMS-LAMP法の増幅時間の短縮と蛍光目視検出の検証について PrimerExplorerV5によりループプライマー (LP) を設計し、変異型検出用プライマーセット(MTPS)にLPを追加してARMS-LAMP法を実施した。MTPSでLAMP反応をしない基準株および野生型株8株でもLPを追加することによってLAMP反応が認められた。LPを追加したことによる非特異的なLAMP反応の可能性があり、増幅時間の短縮が可能でないことが示唆された。次に、MTPSにLoopamp蛍光・目視検出試薬を追加してARMS-LAMP法を実施し、UVランプを用いて、蛍光目視検出を検証した。MTPSでLAMP反応をしない基準株および野生型株8株でも、変異型株と区別しがたい蛍光が認められた。一方で、Loopamp蛍光・目視検出試薬を追加せずにARMS-LAMP法を実施した後に、蛍光灯下で目視による濁度検出を検証した結果、LoopampEXIAにおける測定結果に相関してLAMP反応液の白濁を目視で確認できた。従って、LoopampEXIAが配備されていない一般病院・開業医院においても判定可能であることが示唆された。 2.M.intracelareを用いたARMS-LAMP法の検討について 当該年度の期間中、新型コロナウイルス感染症の拡大による影響で、実験時間の大幅な制限が生じたため、上記の検討が困難であった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の今後の推進方策について、M.avium菌株を培養後に抽出したDNAにてARMS-LAMP法を用いてCAM耐性遺伝子変異を数時間で簡便にCAM耐性化の有無を判定できるシステムを確立することを追究する。そのため、令和3(2021)年度の研究期間中に下記の事項についての解析を行う。 全ゲノム解析を既に完了しているM. avium基準株における23SrRNAに対するデータより、LAMP法プライマー設計支援ソフト「PrimerExplorerV5」を用いて、野生型 (CAM感受性菌株) 検出用プライマーセット (以下、WTPS)を再度設計する。M.avium臨床分離株を培養後に抽出したDNAを用いて、設計したWTPSを使用してARMS-LAMP法を実施する。令和元 (2019) 年度の研究実施計画で設計したWTPSは、変異型株の複数の検体でもLAMP反応が認められたが、令和3(2021)年度の研究実施計画では、検体数をさらに増加させることにより、非特異的なLAMP反応の原因や至適LAMP反応時間を検討することで、これまで解明できなかった至適なWTPSを探索する。なお、令和2 (2020) 年度の研究実施計画において、40株程度の検体数をさらに増加して薬剤感受性試験、DNAシーケンス解析、ARMS-LAMP法を実施する予定であったが、新型コロナウイルス感染症の拡大による影響で、実験時間の大幅な制限が生じたため、検討が困難であった。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度(最終年度)の研究実施計画において、新型コロナウイルス感染症の拡大による影響で、実験時間の大幅な制限が生じたため、以下の計画を一部予定どおり実施できなかったことから、研究の延長申請を行った。 令和2(2020)年度の研究実施計画において、M. avium臨床分離株40株程度を薬剤感受性試験、DNAシーケンス解析およびARMS-LAMP法を実施する予定であったが、全ての菌株を実施することができなかった。上記計画については、令和3(2021) 年度において引き続き実施する予定であり、繰り越した研究費を使用する予定である。また、令和3(2021)年度の研究実施計画に従って、研究を遂行するため、M. aviumの ARMS-LAMP法に用いる野生型 (CAM感受性菌株) 検出用プライマーセットを再度設計し、M. avium臨床分離株を用いたシステムの構築に研究費を執行する予定である。 なお、新型コロナウイルス感染症の拡大による影響で、当該研究期間中にM.intracelare臨床分離株の解析に十分な検体の収集が困難である可能性が高く、本研究は、M. avium株のARMS-LAMP法に用いるプライマーセットを設計し、臨床分離株を用いたシステムの構築をする。
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