研究課題/領域番号 |
19K16446
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
幡生 あすか 大阪大学, 薬学研究科, 助教 (40790895)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 薬学教育 / 行動経済学 / セルフメディケーション |
研究実績の概要 |
薬剤師が行動経済学を学び、来局者が取りうる不合理な行動について理解できれば、その是正を促す(ナッジする)技術を用いた意思決定支援を行う事で来局者の満足度の上昇と効率的な医療の両方に貢献できると考えられる。本課題では、「薬剤師及び薬学生は、セルフメディケーション支援にあたり、どのように行動経済学を学び、実践していくべきか」を明らかにする事を目的とした。 4年計画の1年目にあたる2019年度は、(1) 大学生を対象として、セルフメディケーション実施状況に関するアンケート調査を実施し、解析を行った。その結果、セルフメディケーションに関心・興味がある回答者は28.3%であった。さらに、医歯薬系の学生は、理工系・人文系の学生と比べてセルフメディケーションに関心・興味があると回答した者の割合が有意に高かった。一般用医薬品を使用した事がある回答者は73.9%であった。一方、セルフメディケーション税制を知っていた回答者は4.4%であった。 (2) 行動経済学の薬学教育への導入を検討するにあたり、まずは薬学生に対して行動経済学に関する授業を試みた。あわせて受講者の行動経済学の知識や興味に関する調査を行った。その結果、授業で取り上げた行動経済学の3つの用語(現在バイアス、ナッジ及びプロスペクト理論)について、いずれの用語も90%以上が知らないと回答した。授業後には92.7%が行動経済学に興味をもてたと回答した。行動経済学は、まだ薬学生には馴染みのない分野ではあるが、医療への応用事例を示す等、授業の構成を工夫する事により、薬学生が興味をもって学ぶ事が可能であると示唆された。授業の構成(内容、回数、実施時期等)についてさらに検討を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1) 大学生を対象としたセルフメディケーション実施状況に関するアンケート調査については、解析結果を論文としてまとめた。(2) 行動経済学の薬学教育への導入に関する検討については、初年度の検討として単回の授業を実施した。受講者へのアンケート結果のみからの検討ではあるが、行動経済学を学ぶ事について肯定的な反応を得た。調査結果は2020年度中の学会発表を予定している。またShort reportとしてまとめ、学術誌へ投稿予定である。このように1年目は大学生を対象とした検討を中心に実施し、順調に進んでいる。これらの知見を基に、2年目以降は薬剤師を対象にした調査も進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度(4年計画の2年目)は、(1) セルフメディケーション実施状況の現状調査、(2) セルフメディケーションに関する情報源の選択やセルフメディケーション支援の現状調査、(3) ナッジの医療分野への応用に関する情報収集、(4) 行動経済学の薬学教育への導入に関する検討、を行う。 (1) セルフメディケーション実施状況の現状調査は、2019年度の知見を基に、アンケート項目の見直しを行う。(2) 薬剤師を対象とし、重要視する情報源やセルフメディケーション支援の現状を把握する。また、行動経済学に関する知識や、業務への応用についてもあわせて調査し、行動経済学に関する医療現場のニーズを抽出する。(3) 「研究実績の概要」に述べたとおり、ナッジは薬学生にあまり知られていない概念であった。そこで、医療分野への応用事例を継続して収集し、授業教材の充実を図る。(4) 行動経済学の薬学教育への導入に関する検討については、授業の構成(内容、回数、実施時期等)について検討を進める。2019年度は授業直後の学習者の反応を基に評価したが、2020年度は多角的な評価が行えるよう検討する。また多職種連携教育への応用を視野に入れ、医学教育等の教育カリキュラムも参考にしたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度内を予定していた論文掲載料の支払いが次年度になったため、掲載料相当額、及び掲載料決定後に購入予定であった物品について次年度使用額が生じた。物品(書籍等)は次年度分と併せて購入予定である。また、本年は人件費が発生しなかったが、次年度は資料整理等の補助に使用予定である。
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