本研究は、自発報告データベースから妊婦における報告事例を抽出し、シグナル検出を行うことで、妊婦における未知の副作用シグナルを見出すことを目的としている。これまでの研究期間で、妊婦における報告事例の抽出方法の最適化や、リスクが既知の医薬品を題材とした感度の算出によるシグナル検出の妥当性評価などを実施し、分析手法の確立のために段階的に検討を行ってきた。 最終年度は、ここまでに確立した分析手法を利用して、医薬品医療機器総合機構の医薬品副作用データベース(Japanese Adverse Drug Event Report database; JADER)から妊婦における報告事例を抽出し、それらを対象とした不均衡分析によるシグナル検出を実施することで、これまでに情報が十分に得られていないリスクの検出を試みた。また、本手法を米国の自発報告データベース(FDA Adverse Event Reporting System; FAERS)にも適用し、追加解析を実施した。その結果、ラタノプロスト点眼液によるPregnancy Lossにおいて、JADERではReporting Odds Ratio[95%信頼区間]が12.84[3.06-53.86]、FAERSでは4.35[1.98-9.54]とシグナル検出基準を超える値を示し、その潜在的なリスクを明らかした。このように妊婦に対する使用頻度が比較的少ないと考えられる医薬品であっても、蓄積された自発報告の分析により、潜在的なリスクを見出すことが可能と考えられた。
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