研究課題/領域番号 |
19K16462
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
伴野 拓巳 摂南大学, 薬学部, 助教 (30824685)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 膜透過ペプチド固定化高分子 / 抗体医薬 / マクロピノサイトーシス / シンデカン-4 / 吸収促進剤 / 経鼻吸収 |
研究実績の概要 |
本研究では、申請者らの研究室において開発された新規吸収促進剤である膜透過ペプチド固定化高分子を用いて、抗体医薬の経粘膜吸収促進技術の開発を目指している。前年度までの検討において、膜透過ペプチド固定化高分子の1つであるテトラグリシン-L-オクタアルギニン固定化ヒアルロン酸(G4R8-HA)を併用することによりIgG抗体医薬であるトラスツズマブの経鼻吸収が飛躍的に促進されることを明らかにしてきた。 今年度は引き続き、抗体医薬の経鼻吸収に対するG4R8-HAの効果を確認し、同高分子の吸収促進効果の普遍性の検証を行った。加えて、同高分子による吸収促進メカニズムの解明を目的として、siRNAによる遺伝子ノックダウン細胞を用いた抗体の取り込み試験を行い、吸収促進メカニズム並びにそのメカニズムに関与する分子の特定を試みた。 Fab抗体医薬ラニビズマブ(分子量:約48 kDa)、PEG化Fab抗体医薬セルトリズマブペゴル(分子量:約91 kDa)、酵素処理及びカラム精製により得たトラスツズマブF(ab')2断片抗体(分子量:約110 kDa)を用いてマウスにおける経鼻吸収促進作用を検討したところ、いずれの抗体においてもG4R8-HAを併用することにより有意なバイオアベイラビリティの上昇が認められた。 G4R8-HAによる吸収促進メカニズムの解明を目的として、種々の遺伝子をノックダウンしたHeLa細胞を用いて検討を行ったところ、マクロピノサイトーシスの誘導に関与するシンデカン-4をノックダウンした細胞においてG4R8-HAによる各抗体の細胞内取り込み促進作用の有意な抑制が認められた。 以上のことから、G4R8-HAは抗体に対する普遍的な吸収促進作用を有し、その吸収促進メカニズムにはシンデカン-4を介したマクロピノサイトーシスが関与することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の今年度の目標は、①種々の構造を有する抗体医薬に対するテトラグリシン-L-オクタアルギニン固定化ヒアルロン酸の経鼻吸収促進効果の検証、②同高分子による吸収促進機構に関与する分子の特定および③化学構造の異なるヒアルロン酸誘導体を用いた抗体医薬の吸収促進効果の検証であった。 ①の種々の構造を有する抗体医薬に対する経鼻吸収促進効果の検証については、昨年度のトラスツズマブに加えて、Fab抗体やPEG化Fab抗体医薬、F(ab')2断片抗体についての検討が進み、本技術の汎用性に関する評価は概ね終了した。 ②のノックダウン細胞を用いた吸収促進機構の解明においては、ラニビズマブ、セルトリズマブペゴル、トラスツズマブF(ab')2およびトラスツズマブの4種類の抗体を用いた検討が終了し、いずれの抗体においてもシンデカン-4が重要な機能を果たすという一貫した結果が得られた。 ③の化学構造の異なるヒアルロン酸誘導体を用いた抗体医薬の吸収促進効果の検証については、in vitroでの検討を開始し、アルギニン鎖長の影響の検討を開始した。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は、令和2年度に進めてきた吸収促進機構の解析において明らかになったシンデカン-4の関与についての詳細な解析を進める。さらに、ヒアルロン酸の細胞内取り込み機構がテトラグリシン-L-オクタアルギニン固定化ヒアルロン酸による抗体の吸収促進に関与している可能性を鑑み、膜透過ペプチド固定化高分子を構成する高分子プラットフォームが吸収促進効果に与える影響についても精査する。 化学構造の異なるヒアルロン酸誘導体を用いた抗体医薬の吸収促進効果の検証について、引き続きin vitroでの評価を進めるとともに、in vivoでの経鼻吸収促進効果について評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
抗体のELISA系等の実験系の構築および各種検討が順当に進捗したため。 次年度使用額については、実験動物および各種試薬類などの消耗品費に充当する。
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