研究課題/領域番号 |
19K16464
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研究機関 | 武庫川女子大学 |
研究代表者 |
小島 穂菜美 武庫川女子大学, 薬学部, 嘱託助手 (20779243)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | バイオセンサ / 苦味受容体 |
研究実績の概要 |
多くの医薬品はなんらかの苦味を持っている場合が多く、医薬品の苦味は、ときとして患者のコンプライアンスを大きく損ねる。そのため、薬物自体や剤形としての医薬品の苦味を含めた味を正しく評価し、服用し易い医薬品をつくることは重要である。現在の味覚センサは生体膜を模倣した人工脂質膜を味物質の受容部に用いてin vitroで評価する系であるが、生体内では、呈味物質が味蕾の味細胞にある味覚受容体に結合することで知覚するため、全ての味受容反応を厳密に評価しているとは言い難いのが現状であり、苦味物質によっては味覚センサと反応しにくい物質も存在する。そのため、ヒト官能試験の実施が不可欠であり、その試験結果および味覚センサの測定結果との相関性を考慮することが必要となってくる。しかし、倫理的な観点からヒト官能試験を行うことのできない医薬品や新規開発医薬品などが存在する。ヒト官能試験の代替法としても利用可能で、従来の方法に比べてよりヒトの味受容反応に近い評価法を確立させることが課題となっている。そこで研究代表者は、本研究において、ヒトの味受容反応により近づけるためにヒト苦味受容細胞を用いたバイオセンサの開発に取り組んでいる。 2019年度は、苦味受容体hTAS2Rおよび膜電位依存性プロトンチャネル (Voltage-sensordomain only protein1:VSOP1) の遺伝子に関してヒト腎臓cDNAを鋳型にPCRにて全長鎖cDNAを得た後、得られたcDNAをHEK293細胞に導入して、hTAS2RおよびVSOP1をそれぞれ強制発現した細胞系を作製した。次に、従来の味覚センサにおいて高分子支持体として用いられているポリ塩化ビニルをセンサチップの基盤とし、その上に導電性シルクゲル膜を固定させる工程に取り組んでいるところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
導電性シルクゲル膜を用いたバイオセンサの作製において、安定的な導電性シルクゲル膜を構築するために各工程での条件を精査し、一つ一つの工程に時間を要したため、進捗がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
バイオセンサ膜の作製が完了次第、バイオセンサを用いた膜電位の測定と医薬品の苦味評価を行う。定量的な苦味受容反応の評価方法の確立は、従来の味覚センサと類似しているため、時間を大いに要することはないと考えている。評価方法を確立した後には、医薬品の苦味を網羅的に測定し、当研究室のヒト官能試験データに加えて、必要最低限のヒト官能試験を実施し、バイオセンサにより得られたデータとの相関性を確認する。また、これらの結果をふまえ、医薬品の構造、溶解性、脂溶性等の物理化学的性質と苦味受容体への結合性や親和性等の生化学的性質についてデータベース化し、医薬品の苦味受容反応のパラメータを探索することで医薬品の苦味予測法を確立する。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品等の購入において、当初の計画よりも安価で購入することが可能であったこと、参加を予定していた国際学会に参加できなかったことから次年度使用額が生じた。 次年度は、バイオセンサを用いた医薬品の苦味評価を行うため、様々な医薬品を購入し、実験を進める予定である。
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