研究課題/領域番号 |
19K16471
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
川岸 将彦 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (60323606)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 細胞骨格 / 螢光相関分光 |
研究実績の概要 |
1. 研究の成果の内容: 本研究は、回転拡散を利用した螢光相関分光法(Fluorescence Correlation Spectroscopy, FCS)により、細胞骨格タンパク分子の重合の過程を観察する事を目的とする。令和元年年度は、研究室で組み上げてきた螢光相関分光法の光学系を、並進拡散だけでなく、回転拡散の観測にも対応出来るように改造する作業を行った。令和2年度は、光学系の安定性を上げ、測定の精度を上げるための調整、修正の作業を行った。主に光路が弱くて乱れやすかった、ピンホール付近と、検出側の光路の分岐部分の改善を行った。令和3年度は、引き続き、光学系の安定性と測定の精度を上げるための調整、修正の作業を行った。高速の光子検出器のアフターパルスの誤差の迂回と、高速の光子を見逃す偽陰性への対応のため、検出側の光路を分岐して並列して検出をしている。その分岐後に挿入する光学素子の調整を行った。また、分岐光学系から検出器に光を導入する部分の小さな乱れが検出の感度に大きく影響するため、光の導入に使うファイバーのカップリングなどの補強や調整を行った。現在は改めて、組み上げた光学系を用いて、簡単な螢光分子などの試料を測定し、更に位置合わせを繰返し、精度を上げるための調整を続けている。 2. 意義、重要性等: 回転拡散は、並進拡散よりも、螢光分子の分子量の変化に鋭敏なので、それを利用した螢光相関分光法は、対象分子の相互作用による分子量の変化を鋭敏に、しかも溶液の中で直接観観察する事ができるという意義がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19による活動制限と混乱のため、自分自身の実験活動も、物品の調達も思うようにならない事が多かった。その為、測定系の調整に予定よりも長い時間がかかってしまった。
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今後の研究の推進方策 |
アフターパルスが少ない新しい高速の光子検出器 (ハイブリッドフォトディテクタ(HPD)を想定していたが、その他の機種も比較検討している。) の導入が計画されており、光学系の調整が十分出来たところで、現在の光電子増倍管による測定と切り換える予定である。 令和4年度は、令和3年度に続いて、螢光偏光の回転拡散を利用した螢光相関分光法の光学系を用いて、重合蛋白の重合の初期過程を観察する事を目指す。主に、線維芽細胞など多くの細胞に発現するビメンチンと、神経組織に多く発現するニューロフィラメント蛋白との二つの蛋白を考えていたが、神経変性疾患などで見られるアミロイド蛋白のフィブリル形成過程も対象にしてみたい。アミロイド蛋白のフィブリル形成過程を螢光相関で観察する場合、フィブリルに選択的に結合する螢光色素を使うが、これらの色素はフィブリル構造を染めるが、蛋白の種類への特異性は低い。一方、蛋白の種類に特異的に螢光偏光標識をするための、抗体様小分子を利用した新しいプローブが開発されているので、それを活用してみたい。公開されているデータベースの中からアミロイドに結合する抗体様小分子を選んで、それを利用した螢光偏光プローブの作製を試みる。in vitroのフィブリル形成実験を行って、螢光色素標識による螢光相関分光観測を行う。また、抗体小分子を利用した螢光偏光プローブでも、フィブリル形成過程の観察を行い、両者の特性を比較する事を考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
光学系の位置合わせ調整が十分に進んだ時点で、新たな高速の光子検出器を導入する事を予定していた。研究開始当初は、ハイブリッドフォトディテクタ(HPD)を導入する事を想定していたが、新しい型の光電子増倍管や、シリコンフォトマルティプライア (SiPM) など優れた特性を示す光子検出器が広まってきているので、どの機器を導入するかを更に検討することにした。それが、次年度使用額が生じた理由である。令和4年度中に購入する予定である。
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