研究実績の概要 |
1. 研究の成果の内容: 本研究は、回転拡散を利用した螢光相関分光法(Fluorescence Correlation Spectroscopy, FCS)により、細胞骨格タンパク分子の重合の過程を観察する事を目的とする。最終年度である令和5年度は、アフターパルスが少ない新しい高速の光子検出器として、シリコンフォトマルティプライアのMPPCモジュールを購入した。その検出器の性能に合わせて、測定光学系も種々の修正更新を行った。測定の試験を続けるなかで、回転拡散を利用した螢光相関分光法の解析を行う上で、二つの課題が見付かった。一つは、実際の測定時間長が有限であるため、実測値から自己相関函数を推定する際にバイアスが生じる事である。もう一つは、回転拡散の測定の時に、並進拡散とは異なるノイズの出方を正しく評価しないと、試料の状態変化による回転拡散の変化を検出するのが難しい点である。この二つの課題に対して、前者は有限時間測定での回転拡散の推定のバイアスの補正法を作り、後者は測定試料の状態変化によって生じる回転拡散の変化を検出するための種々の条件を求め、現在論文発表に向けて準備を進めている。 2. 意義、重要性等: 回転拡散は、並進拡散よりも、螢光分子の分子量の変化に鋭敏なので、それを利用した螢光相関分光法は、対象分子の相互作用による分子量の変化を鋭敏に、しかも溶液の中で直接観観察する事ができるという意義がある。
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