研究実績の概要 |
口腔乾燥症は難治性疾患の一つであり、疾患特異的な治療法は開発されていない。投与薬剤の副作用、口呼吸、シェーグレン症候群、放射腺治療の後遺症、老化、糖尿病、更年期障害などが原因とされ、誰にでも起こりうる身近な疾患である。唾液分泌機能の低下は様々な臨床症状を引き起こし著しいQOLの低下を招く。対処療法が治療の主体であり、唾液分泌の回復や唾液腺の再生に関する研究は重要である。これまでに細胞間接着分子の欠損マウスで唾液腺の形成異常が報告されているがその発症メカニズムは解明されていない。
本年度は野生型マウス、ネクチン1欠損マウス、ネクチン2欠損マウスの顎下腺、舌下腺における細胞間接着タンパク質の発現について詳細な観察を行った。野生型マウスでは細胞接着分子であるネクチン1, 2, 3、アファディン、E-カドヘリン、ZO-1などの細胞間接着分子の発現が観察された。ネクチン1欠損マウスではネクチン1だけでなくネクチン3のシグナルが消失していたが、その他の細胞間接着分子のシグナルには大きな変化が認められなかった。また、ネクチン2欠損マウスではネクチン2の発現が消失しているのにも関わらず、ネクチン1, 3のシグナルの発現は野生型マウスと大きな差異を認めず顎下腺、舌下腺ともに形態異常も認めなかった。このことから、ネクチン1, 3が唾液腺の形態形成に関与してる可能性が強く示唆されるため、今後はこの分子に着目して、発生、維持に関与するシグナル分子の制御機構の解析を行う予定としている。
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