研究課題/領域番号 |
19K16479
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
湯浅 秀人 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 助教 (50825297)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 肝星細胞 / 肝線維化 / 超微形態 / 電子顕微鏡 |
研究実績の概要 |
肝星細胞は活性化に伴いコラーゲン等の細胞外基質を産生し、肝線維化の要因となる細胞である。我々は事前研究において肝星細胞は肝臓内において微小突起を介して肝細胞と接着しており、肝星細胞と肝細胞との接着が肝星細胞の活性化抑制に働く可能性を示唆している。一方でこの接着を担う肝星細胞の微小突起についてはほとんど何も知られていない。本研究は肝星細胞の微小突起の性質及びその動態について解析することを目的とした。 細胞の微小突起構造としてはフィロポディアが広く知られているため、まずマウス正常肝臓を用いてフィロポディア構成タンパク質の検出を行った。結果、アクチン線維を束ねるタンパク質であるFascinおよびアクチン線維の伸長に関わるVasodilator stimulated phosphoprotein (VASP)が肝星細胞の微小突起に発現していることを免疫組織化学的染色および免疫電子顕微鏡法を用いて示唆し、肝星細胞の微小突起がフィロポディア様構造であることを示唆した。また、アクチン線維束形成の始点となるアクチン重合核形成タンパク質を免疫組織化学的染色によりに検出したところ、肝星細胞はArp2陰性mDia2陽性であった。従って、肝星細胞の微小突起形成はArp2/3非依存的mDia2依存的である可能性を示した。さらに四塩化炭素を投与して肝障害を誘導した後、肝星細胞の微小突起の形態変化を電子顕微鏡を用いて観察を行ったところ、四塩化炭素投与後6時間で微小突起を有さない肝星細胞が頻繁に確認された。また培養系の実験においてもマウスから採取した肝星細胞を肝細胞と共培養することにより、培養条件下における微小突起の形成および肝細胞との接着を確認することが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウス肝臓の肝星細胞において微小突起を構成するタンパク質を同定することが出来、その形成過程を予測しうるタンパク質の検出にも成功した。また培養系の実験も計画通りに進んでおり、概ね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
in vivoではマウスに肝障害を誘導した後、時系列的にこれまでのフィロポディア関連タンパク質、さらにアクチン線維の動態に関わるタンパク質を肝星細胞で検出し、微小突起が消失・再生するメカニズムの解析にも着手する。またmDia2等のin vivoで確認されたタンパク質を培養条件下でsiRNAを用いて発現を低下させ、肝星細胞による微小突起形成が抑制されるかを確認するとともに、この培養系を用いてアクチン線維形成に関わるとされているSmall GTPaseシグナリングに関わるタンパク質を解析し、微小突起形成メカニズムをさらに詳細に解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
培養系の条件検討に時間がかかり、培養系についての詳細な解析を翌年度に実施することにしたため。 年度末における学会旅費として計画していた旅費がコロナウイルスの蔓延により中止になったため。
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