現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TGマウスはBACトランスジーンの挿入によって、その領域の内在性の遺伝子の発現を阻害または変動させ、その結果生じる遺伝子の機能異常により、疼痛刺激に対する行動変化が起きたと考えた。次世代シークエンスを用いた順遺伝学的なスクリーニングにより、トランスジーン挿入部位近傍の3つ遺伝子制御が完全に破綻していることを見出している。 本研究では、同定された候補因子の中で細胞膜の動態や細胞内トラフィッキングに関与する因子、Sorting nexin (Snx)に着目した。Snx-KOマウスを入手して行動試験を含む様々な検討を行った結果、TGマウス同様に痛み行動の減弱と免疫系細胞の異常が認められた。また、WTおよびSnx-KOマウスからDRGニューロンを調整し、Ca imagingを行なった結果、Snx-KOマウス由来のDRGニューロンでは発痛物質に対する反応が有意に減弱していることを見出した。さらに、疼痛発生時に機能が亢進する疼痛関連因子(TRPV1, Nav1.7, P2X3, Trk等)の発現を調べた結果、Snx-KOマウスではDRGにおけるこれらの発現が著しく低下していることを見出した。興味深いことに、Snx-KOマウスもTGマウスと同様に機械刺激および化学刺激に対する反応は著しく低下しているものの、熱刺激に対する反応は正常であった。
|