研究課題
本研究課題はフォークヘッド転写因子の1つであるFOXO1がアミノ酸トランスポーターxCTを介してリンパ管内皮細胞における酸化ストレス抵抗性の獲得およびそれに伴うリンパ管新生能の調節に寄与している可能性を検討するものである。本研究課題においては糖尿病性潰瘍モデルの潰瘍組織におけるリンパ管新生を病理的リンパ管新生モデルとして観察する予定にしている。そこで2019年度においては病理的リンパ管新生におけるFOXO1の機能をin vivoで解析するために、リンパ管内皮細胞特異的および薬剤誘導性にFoxo1をノックアウト、あるいは核内に強制発現できるマウスを作出した。またこれらのマウスにおいて発達期にタモキシフェンを腹腔内投与することにより、実際にリンパ管内皮細胞特異的に遺伝子組み換えが誘導されることを確認できた。また本研究課題においては初代培養リンパ管内皮細胞を用いてin vitroの系でFoxo1およびxCTの機能解析を試みる予定である。そこで2019年度はリンパ管内皮細胞の初代培養系においてFoxo1あるいはxCTを効率的にノックダウンあるいは強制発現する手段の確立に成功し、リンパ管内皮細胞においてFoxo1, xCTがどのように機能するか解析するための手段が整った。さらにリンパ管内皮細胞においてFOXO1の欠失が細胞内グルタチオン量を減少させること、酸化ストレス死を促進すること、xCT mRNA発現量を強く抑制することを確認できた。
3: やや遅れている
リンパ管内皮細胞特異的にFoxo1を核内に強制発現するマウスの作出と初代培養リンパ管内皮細胞にFoxo1を強制発現する手段の確立において技術的な問題により時間がかかったため、当初の予定よりやや遅れている。
病理的リンパ管新生におけるFoxo1の機能をノックアウト・強制発現によりin vivoで解析する手段を得ることに成功したため、今後はこれらのマウスにおいて糖尿病性潰瘍を生じさせリンパ管新生の観察を進めていく。Foxo1-xCT系が病理的リンパ管新生において作用していることが分かれば、in vitroの系で運動能・増殖能等の評価を行いその機能を詳細に検討していく。またFoxo1がxCTの発現量を上方調節するメカニズムを、プロモーター解析等により検討する。
実験に用いる遺伝子組み換えマウスの作出や実験の条件検討等に時間を要し、それらを用いた生化学的・遺伝学的アッセイは一部しか行うことができなかったため次年度使用額が生じた。次年度、各種アッセイに必要な試薬の購入、免疫組織化学等タンパク質解析に使用する抗体の購入、および実験動物の飼養・維持に必要な消耗品の購入等に使用する。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件)
Development
巻: 147 ページ: -
10.1242/dev.181545.
Biochemical and Biophysical Research Communications
巻: 520 ページ: 304-310
10.1016/j.bbrc.2019.10.040.