ATPによる化学受容細胞-感覚神経終末間の神経伝達終息機構を明らかにする目的で、細胞外のATPをADPに加水分解する酵素ecto-ATPase(ENTPD2)の免疫組織化学的局在を解析した。ecto-ATPase陽性反応は、S100B陽性反応を示すグリア様支持細胞に認められ、強陽性反応は特に細胞質突起の膜領域に強く局在していた。ecto-ATPase陽性支持細胞は細長い細胞質突起を伸ばし、VNUT陽性化学受容細胞間および細胞集団を緊密に取り囲んでいた。一方で、VNUT陽性化学受容細胞とP2X3陽性神経終末の接触面にecto-ATPase陽性反応は認められなかった。以上の結果から、ecto-ATPaseは支持細胞に発現し、VNUTを有する化学受容細胞-感覚神経終末間の神経伝達において過剰なATPを除去することにより神経伝達の終息に関与していると考えられる。また、ADPに高い親和性を示すGi蛋白共役型P2Y12受容体が、VNUT陽性化学受容細胞に局在していた。ATPの分解産物ADPは、P2Y12受容体を介して化学受容細胞の興奮を負のフィードバック調節している可能性が見出された。
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