研究課題/領域番号 |
19K16483
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
表原 拓也 東京医科大学, 医学部, 講師 (40800545)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 発生 / 精巣 / 精巣網 / 精巣輸出管 / 中腎細管 / Ad4BP/Sf1 / sequential IHC / 三次元再構築 |
研究実績の概要 |
本課題の目的は,脊椎動物において保存された「精巣―精巣上体間の接続に関わる因子」の同定から,精路形成機構の共通点=基本原理を明らかにすることである。2020年度は,精巣網―精巣輸出管(中腎細管)間の接続部位の検討を行なった。 網羅的遺伝子発現解析を行う動物種であるマウス(C57BL/6J)の未分化生殖腺を時系列的にサンプリングし,それらの連続切片を用いて中腎細管の三次元再構築を試みた。その結果,胎齢11.5日以降の中腎内において,3から6本の中腎細管が中腎管と接続していた。そのいくつかは枝分かれしたため,先端は5から9ヶ所存在していた。そのうち3から6ヶ所にはAd4BP/Sf1陽性の精巣網細胞が隣接していた。成獣では2から5本の精巣輸出管細管が存在することから,精巣網-精巣輸出管間の接続は未分化生殖線の運命が決まる前から,中腎細管の先端とAd4BP/Sf1発現細胞との間で生じていることが示唆された。また,胎齢18.5日の予定精巣輸出管領域には,湾曲した中腎細管が1本の細管から枝分かれする様子が観察された。これまで,精巣輸出管に含まれる細管のネットワーク形成過程には,中腎細管同士の癒合などが想定されていた。しかしながら,本研究により,中腎細管とそれらを分岐する領域の中腎管頭側領域が精巣網領域に向かって折り畳まれることで精巣輸出管が形成されることが明らかとなった。また,中腎細管が湾曲するまでの間には,初めS字状だった中腎細管が短く・真っ直ぐになり,その後,伸長・湾曲していくことが観察された。加えて,それらの時系列とは異なる時系列で,精巣上体管の肥厚が観察された。これらのことから,中腎細管特有のシグナリング経路が想定された。これらの知見をまとめて英語論文を投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度までに,網羅的遺伝子発現解析を行うマウスにおける精巣網-精巣輸出管間の接続時期や部位を同定できた。これらの知見をまとめて英語論文を投稿中である。 また,他の脊椎動物種の胚をサンプリングし,三次元解析を進めているところである。2021年度中には,脊椎動物種間における精巣輸出管の発生過程の比較が行える予定である。 加えて,コロナ禍の影響で遅れていた網羅的遺伝子発現解析に関しても,胎齢11.5日のAd4BP-EGFPマウスから,FACSを用いて生殖線体細胞/中腎内精巣網細胞を単離した。現在,その純度を検討中で,2021年度中には次世代シーケンサーを用いた網羅的遺伝子発現解析が行える予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は,網羅的遺伝子発現解析を進めていき,Ad4BP/Sf1発現生殖腺体細胞と中腎細管との間で働くシグナリングの候補を挙げる。 また,平行して哺乳類以外の脊椎動物種の精路について三次元解析を進めていき,形態としての相同性を解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度における使用額の端数であり,次年度での使用計画に変更はない。
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