研究課題
本課題の目的は,脊椎動物における精路形成機構の共通点=基本原理を明らかにすることである。2020年度に哺乳類のマウスにおける接続部位の検討を行った結果,中腎細管の先端とAd4BP陽性のrete cellとの間で接続することが示唆された。しかしながら,ヒトを含む大型哺乳類や他の脊椎動物種ではマウスと異なり中腎細管の先端に糸球体およびボーマン嚢が形成される。そこで,大型哺乳類,鳥類,両生類のモデル動物としてウサギ,ニワトリ,ネッタイツメガエルの発生過程をそれぞれ検索した。rete cellはウサギではマウスと同様にAd4BP陽性/Pax2陰性であったが,ニワトリ・ネッタイツメガエルではPax2陽性であった。これらの動物に共通して,精巣索を束ねる索状構造(testis canal)および中腎内におけるrete cellの集団(lateral kidney canal)が形成された。rete cellと中腎細管との接続部位は,ウサギでは中腎頭側に存在する中腎細管の先端またはボーマン嚢,ニワトリでは中腎内のボーマン嚢,ネッタイツメガエルでは腎口と呼ばれる中腎表面における中腎細管の開口部となっていた。これらの結果から,脊椎動物におけるrete cellと中腎管の間での接続部位は,進化の過程で腎口からボーマン嚢(中腎細管の先端)に移動したことが示唆された。加えて,両生類,鳥類,哺乳類に共通して,精巣索を束ねるtestis canal,およびrete cellで形成するlateral kidney canalが発生することが明らかとなった。マウスのtestis canalは消失することから,哺乳類および鳥類における成体の精巣網は,中腎内のlateral kidney canalが精巣に取り込まれたものであることが示唆された。
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