研究課題
甲状腺より産生される、甲状腺ホルモン(TH)は周産期の神経発達に必要不可欠なホルモンの一つである。THは標的臓器細胞に取り込まれ、標的遺伝子のTH応答領域に結合する受容体に結合し、標的遺伝子の発現を転写レベルで制御する。TH非結合時には、抑制型転写共役因子 (NCoR)からなる複合体により転写が抑制され、TH結合時には活性型共役因子により転写が活性化される。しかし、THによる神経系への作用機序、特に転写共役因子による制御機構は未だ不明である。そこで本計画では抑制型転写共役因子の中枢神経系ノックアウトマウスモデルを作製し、その生理学的意義を明らかにすることが目的である。前年度までに神経細胞特異的な転写抑制型共役因子遺伝子(NCoR1/SMRT)ノックアウトマウスモデルを作製し、ダブルノックアウトマウスは生後2週間以内に致死であることを見出した。そこで前年度はNCoR1,SMRTの各単一ノックアウトマウスを作出することにより、その表現型の解析を行った。ダブルノックアウトマウスと異なりNCoR1,SMRTの単一ノックアウトモデルではいずれも発育に障害は認めなかった。また、行動学的解析では運動学習、協調運動、認知記憶試験には異常を認めなかったものの、不安・情動や社会行動性の自閉症スペクトラム障害に類似した異常を来すことを見出した。これらの結果はヒトで報告されている所見に類似しており、本研究で作製したノックアウトマウスがモデルとして有用であることを明らかにした。今後は脳領域特異的なマウスモデルを作製し、NCoR1/SMRTの神経細胞における役割を明らかにしていく。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 3件)
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