前回までにIL-10によるスーパーオキサイド減少効果とNOSカップリングの改善効果を右心房心筋及びヒト心筋細胞にて確認できた。それはERK及びp38MAPKシグナリングの活性化を抑制することで効果を発揮していた。そのため,さらなる機序を追究するために抑制されるスーパーオキサイドはNADPH由来なのかミトコンドリア由来なのかを確認した。NADPHによる刺激を行い調査してみたところ,NADPH由来のスーパーオキサイドを有意に抑制していた。超遠心法により細胞膜からのタンパクを抽出しウェスタンブロット法で確認したところ、Rac-1及びp47phoxの膜移行も抑制されていた。ERK inhibitorとp38MAPK inhibitorでどちらのシグナリングが関与しているか確認したところ,p38MAPKシグナリング抑制がRac-1とp47phoxの膜移行を抑制しNADPH由来のスーパーオキサイドを抑制していることが判明した。さらに,IL-10によるテトラヒドロビオプテリンが上昇しており,こちらはNOSカップリング改善の機序と考えられた。IL-10のオフターゲット効果であることを否定するために培養心筋細胞のIL-10レセプターをsiRNAでノックダウンしIL-10負荷実験を行おうとしたが,siRNAによるノックダウン効果は50-60%と不十分であり,siRNA実験系のさらなる洗練化を行っている。
|