培養心筋細胞のIL-10レセプターをsiRNAでノックダウンしIL-10負荷実験を行おうとしたが,siRNAによるノックダウン効果は50-60%と不十分であり,siRNA実験系のさらなる洗練化を行ったところ,70-80%程度のノックダウン効果が得られた。IL-10レセプターノックアウト(70-80%)心筋細胞にIL-10を作用させたところIL-10による活性酸素抑制効果は減弱していた。また,成熟ヒト心外膜脂肪細胞への効果を確認する実験に移った。ヒト心外膜脂肪から前駆脂肪細胞を抽出培養した。その後独自の方法で脂肪細胞の分化方法を見出し,成熟脂肪細胞へ再現性をもって分化させることに成功した。このヒト心外膜由来前駆脂肪細胞を用いてIL-10の負荷実験を行ったところ,負荷24時間で脂肪細胞中の炎症性サイトカインのmRNA発現量は有意に減少していた。これは培養細胞上澄み液中分泌においても同様の結果であった。このことから,IL-10はヒト心外膜脂肪のセクレトームプロファイルを修飾する可能性があることが判明した。時間及び費用の関係でIL-10投与下培養脂肪細胞と心筋細胞との共培養実験は行うことが出来なかったが,IL-10投与下で培養した心外膜脂肪細胞のセクレトームを含む培養液を(IL-10は除去された状態)心筋細胞へ負荷すると,NADPHオキシダーゼで刺激した際の活性酸素の発現量が減少することが判明した。
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