アルツハイマー病(AD)は、現在有効な治療法がなく、超高齢化社会の日本において、今後増える事が予想されている疾患である。これまでの研究から、ADの原因として、アミロイドβ蛋白質(Aβ)の沈着が考えられており、Aβの脳内からの除去の仕組みが明らかとなれば、新たな治療法や予防法の開発に貢献できると予想される。 これまでの研究から、脳内の異物貪食除去に関わる受容体としてMultiple-EGF like domains 10 (MEGF10)と呼ばれる分子が報告されている。そこで本研究は、Aβの除去にMEGF10が関与するかどうかを明らかにする事を目的として行う。 本年度では、以下の点について解析を行った。(1)マウス胎児の脳から、初代培養神経細胞とアストロサイトを調製し、MEGF10の発現の有無について検討した。(2)初代培養神経細胞とアストロサイトにおいて蛍光標識したAβ(Aβ40、Aβ42、Aβ43)を反応させ、細胞内に取り込むかどうか検討した。その結果、初代培養神経細胞、アストロサイトともにMEGF10の発現が認められた。また、初代培養アストロサイトにおいて、沈着性・凝集性の高いAβ42、Aβ43は貪食したが、沈着性・凝集性の低いAβ40についてはほとんど貪食しないという事が明らかとなった。一方で、初代培養神経細胞においては、結論付けるに至らなかったため、今後の課題として継続する予定である。
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