研究課題
心房細動治療において薬物療法と非薬物療法を組み合わせた併用療法は単独の治療と比較して心房細動の再発率を下げることが予想されるが、既存の抗心房細動薬は心房/心室非選択性であるために致死的な心室不整脈などの有害事象を引き起こす懸念がある。そのため、心房選択的な治療薬の開発に大きな期待が寄せられている。新薬開発における前臨床試験では、心房有効不応期延長作用が臨床効果を定性的に予測するための指標として用いられている。しかし、薬物の心房有効不応期延長作用がどの程度発現すれば抗心房細動効果を発現するのか、その定量的な予測性はいまだに明らかではない。1年目の2019年度は、患者の病態を反映したin vivo発作性心房細動犬モデルを作製した。以前の検討において正常犬で心房有効不応期延長作用を示した薬物:ドロネダロン(0.3および3 mg/kg/30 s)、オセルタミビル(3および30 mg/kg/10 min)、ラノラジン(0.3および3 mg/kg/10 min)を静脈内投与し、心房有効不応期、不整脈の誘発率および持続時間に与える影響を測定した。その結果、発作性心房細動犬における心房有効不応期延長作用と抗心房細動作用の発現の程度に相関性が示唆された。当初予定されていた、正常犬において心房選択的有効不応期延長作用を示すM201-A(0.3および3 mg/kg/10min)ならびに抗不整脈薬のピルジカイニド(1および3 mg/kg/10min)を発作性心房細動犬に静脈内投与する実験は現在2例ずつ終了した。
3: やや遅れている
当初の想定よりも発作性心房細動犬モデル作製に時間を要し、さらにCOVID-19の影響により予定していた中型動物を用いた実験を実施できなかったため、初年度計画していた実験が年度内に終了しなかった。次年度予定している持続性心房細動犬モデルの実験と平行して、速やかに実施する予定である。
心房有効不応期延長作用の程度と心房細動抑制効果の発現の関係を定量的に評価するため、2020年度は前年度に引き続き、発作性心房細動犬モデルの実験を遂行する。さらに持続性心房細動犬モデルを作製し、M201-Aを静脈内投与して心房有効不応期や不整脈の停止効果を評価する。また、作用機序の異なる既存抗心房細動薬や他の新規化合物の実験も必要に応じて実施し、心房有効不応期延長作用の薬理学的意義を明らかにする。しかし、当初計画していたイヌモデルによる評価が予定通りに遂行できない場合は、その原因を詳細に分析し、ラット、ウサギ、モルモット、ブタから最適な動物を選択してin vitroまたはin vivo心房細動モデルを作製し、必要な情報を補填することで対応する。
理由:COVID-19の影響により、予定していた中型動物を用いた実験を実施できなかったため。また、当初出席予定であった学会が誌上開催となり、旅費の支出がなくなったため。使用計画:消耗品費および学会参加費の一部として執行する。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (2件)
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