研究課題
心房細動治療薬の新薬開発における前臨床試験では、心房有効不応期延長作用が臨床効果を定性的に予測するための指標として用いられている。しかし、薬物の心房有効不応期延長作用がどの程度発現すれば抗心房細動効果を示すのか、その定量的な予測性はいまだに明らかではない。2年目の2020年度は、発作性心房細動犬モデルを用いて、正常犬において心房選択的有効不応期延長作用を示すM201-A(0.3および3 mg/kg/10min)の評価を実施し、結果を解析した。イソフルラン吸入麻酔下において、高用量3 mg/kgのM201-Aを投与開始後に心室不整脈が発生したため実験を中断した。イソフルランをハロセンに変更して改めて実験を実施したところ、実験は成功した。0.3および3 mg/kgのM201-Aは洞調律、心室固有調律ならびに平均血圧を変化させなかった。3 mg/kgのM201-Aは、投与開始から20分で投与前と比較して心房有効不応期を30 ms延長させたが、心室有効不応期は延長させなかった。M201-Aは用量ならびに刺激頻度依存的に心房間伝導時間を延長させた。M201-A投与前の心房細動持続時間は5.9秒、心房細動周期は146 msであり、0.3および3 mg/kgのM201-A投与開始から10分では、それぞれ4.1秒と148 msおよび1.3秒と172 msであった。麻酔をハロセンに変更後2例目の実験で、再び心室不整脈が発生した。心室不整脈はM201-Aと吸入麻酔薬の相互作用により生じている可能性が考えられ、実験を安定して実施できないこと、ならびに動物愛護の観点から、これ以上発作性心房細動犬モデルを用いて実験することは難しいと判断した。そこで、当初予定していた持続性心房細動犬モデルの実験準備を開始した。
3: やや遅れている
当初の予定で1年目に計画していた発作性心房細動犬の作製に時間を要し、さらにCOVID-19の影響により計画していた実験を年度内に実施できず、2年目に実施することとなった。さらに、薬物相互作用と考えられる実験上の問題が発生した。そこで、薬物相互作用の問題を解決するためにも、当初2年目に実施予定であった持続性心房細動犬モデルの実験の準備を開始したが、年度内に実験を終了することができなかった。次年度の計画と並行して速やかに実施する予定である。
心房有効不応期延長作用の程度と心房細動抑制効果の発現の関係を定量的に評価するため、2021年度は前年度に引き続き、持続性心房細動犬モデルの実験を遂行してM201-Aを静脈内投与して心房有効不応期や不整脈の停止効果を評価する。また、作用機序の異なる既存抗心房細動薬や他の新規化合物の実験も必要に応じて実施し、心房有効不応期延長作用の薬理学的意義を明らかにする。しかし、当初計画していたイヌモデルによる評価が予定通りに遂行できない場合は、その原因を詳細に分析し、ラット、ウサギ、モルモット、ブタから最適な動物を選択してin vitroまたはin vivo心房細動モデルを作製し、必要な情報を補填することで対応する。
COVID-19の影響により、予定していた中型動物を用いた実験を実施できなかった。また、当初出席予定の学会が延期となり参加できなかったため。さらに、当初出席予定であった学会がオンライン開催となり、旅費の支出がなくなったため。使用計画:消耗品費および学会参加費の一部として執行する。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 10件、 オープンアクセス 10件) 学会発表 (3件)
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