がんなどの疾患において、異常な血管新生が病態の悪化に繋がることから、本研究課題では“血管新生阻害薬の創薬の基礎的検討”を目的として研究を行った。我々は、内因性の免疫調節因子である damaged assosiated molecular patterns (DAMPs) に着目しており、これはがんの進展および血管新生と関連することが知られている。DAMPs の中でも、糖尿病や加齢によって増加し、あらゆる疾患との関連が報告されている advanced glycation end products (AGEs) に焦点を当てて検討を行い、以下の結果を得た。 in vitro 実験系において、AGEsの血管新生促進効果が示された。また、これらAGEsは血管内皮細胞にエンドサイトーシスを介して細胞内へ取り込まれており、このエンドサイトーシスには、スカベンジャー受容体であるCD163、CD36、LOX-1が関与することが示唆された。興味深いことに、エンドサイトーシス阻害剤またはCD163、CD36、LOX-1中和抗体カクテルの処置によって血管新生が抑制されたことから、AGEsが内皮細胞にエンドサイトーシスによって取り込まれることで血管新生を促進していることが明らかとなった。さらに、AGEsによる異常な血管新生を阻害する食物由来成分を見出した。 以上、AGEs による血管新生促進機序の一部を明らかとし、異常な血管新生を抑制することが可能な阻害剤も見出した。このことから、我々の“血管新生阻害薬の創薬の基礎的検討”という目的は果たされたと考えられる。特に、食物由来成分を血管新生阻害薬の候補分子として見出したことは非常に有意義であり、今後の創薬研究に大きく寄与すると考えられる。本研究成果は現在、論文投稿準備中である。
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