研究実績の概要 |
CFTR欠損時の気道上皮の非感染性炎症応答において新規CFTR相互作用分子であるEPHA2受容体の関与が示唆された. 本年度において, 計画していた通り, 炎症誘導機序解析を行なった結果, CFTRはEPHA2と相互作用し, 形質膜からのターンオーバーを促進することが示された. EPHA2のリン酸化変異体を作製し検討を行なった結果, EPHA2-Ser897のリン酸化が炎症誘導に必要であること, CFTRが気液界面培養時に生じるEPHA2-Ser897リン酸化を抑制していることが明らかになった. また, NanoBit systemを用いてEPHA2とリガンドの結合をリアルタイムで検出する実験系を独自に開発し, 解析に用いた結果, CFTRはチャネル機能依存的にEPHA2とリガンド相互作用の安定性を増加させることが示された. このCFTRによるEPHA2-リガンド安定化作用がEPHA2ターンオーバー促進に関与するものと考えられた. シグナル解析の結果, CFTR欠損による非感染性炎症応答時にはEPHA2-ERKシグナル経路が活性化されていることも明らかになった. 初代培養ヒト気管支細胞(primary-HBE cell) からconditional reprograming (CR) 細胞を作製することに成功し, 嚢胞性線維症(CF)患者由来のCR-HBE細胞の樹立に至った. CF-CR-HBEを分化させ, 気液界面培養時に誘導されるIL-8産生量を指標に EPHA2及びERK阻害剤の炎症抑制効果を評価した結果, EPHA2-ERK signalの阻害が抗炎症作用を発揮することも示された. これらの結果より, CFTR欠損時の非感染性炎症誘導の有用な標的シグナルの同定と機序を明らかにできたと考える.
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