研究課題/領域番号 |
19K16521
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
細羽 康介 広島大学, 統合生命科学研究科(理), 助教 (20781264)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | エピゲノム編集 / ゲノム編集 |
研究実績の概要 |
ゲノム編集ツールの一つであるCRISPR/Cas9(clustered regularly interspaced short palindromic repeats/CRISPR associated proteins)システムはDNAの二本鎖切断(Double Strand Breaks=DSB)を介して、ゲノム上の任意の場所に塩基の挿入、欠失、置換を生じさせる技術である。この技術の登場により遺伝子改変が容易になり、現在までに哺乳類細胞だけでなく、カエル、ゼブラフィッシュなどの広範な生物種においても用いられている。 近年Cas9のヌクレアーゼ活性を欠失させた変異体(dCas9)を用いたエピゲノム編集技術が注目されている。この技術を用いることでDNA切断を伴わず、標的遺伝子の転写レベルやDNAのメチル化、アセチル化といった修飾状態を制御することが出来る。本研究では固形癌で発現が低下することが知られているE-カドヘリン (CDH1)遺伝子の発現量をエピゲノム編集法により調節し、個体レベルで癌の浸潤及び転移における効果を検証する。また、マウスから回収した癌細胞の各遺伝子発現量を定量する。さらに初代癌細胞の培養を行い細胞の遊走能や浸潤能を三次元培養法を駆使して測定することで細胞レベルでも効果を明らかにする。 2019年度には本実験で用いる各種ベクター類の構築を試みた。システムの中核を成すdCas9が標的であるCDH1遺伝子にコンタクトする目印にはgRNA配列が必要になるため、複数のgRNAを作製し、培養細胞を用いて誘導活性を検討を行った。これにより最適なgRNA配列の決定を試みた。また実験に用いる固形癌誘発マウス の作製を試みた。移植する細胞はヒト膵臓癌由来細胞株であるMIA-PaCa2細胞を想定していたが、発癌モデルマウス が得られていないため、細胞種の変更も含めて再考する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究で用いるのは所属研究室が新たに開発したエピゲノム編集システム、TREEシステムである。2019年度には本システムに必要な各種発現ベクターの作製に取り組んだ。しかしながら固形癌を誘発したマウスを作製出来ず、本システムの固形癌の浸潤、転移能に与える効果を実証出来ていない。2020年度にはマウスの作製とエピゲノム編集ツールの導入を行い、効果を明らかにする必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度中に固形癌誘発マウスの作製を完了する。さらに作製したマウスにTREEシステムを導入し、固形癌におけるエピゲノム編集法の効果を実証する。具体的にはマウス の癌組織から癌細胞を回収する。その後3次元培養法等を用いて癌細胞の浸潤、転移における効果を明らかにする。また、各関連遺伝子の発現量をReal-time PCRで測定する効果を定量的に示すことを目的とする。これらの工程を次年度中に行うことを目標とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度中に固形癌誘発マウスの作製と固形癌におけるエピゲノム編集法の効果の実証を完了出来なかったため、次年度についても研究を続行する必要がある。具体的には固形癌誘発に用いるヌードマウスは繁殖が容易では無いため新規に購入し実験に用いる必要がある。このヌードマウス の購入費用と維持費用に次年度分として請求した助成金を主に使用する予定である。 また、追加で発現ベクターを作製する必要がある。この作製に制限酵素、PCR試薬等の分子生物学用試薬を使用するため、これら試薬の購入費用にも次年度分の助成金を使用する予定である。
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