研究課題
ミトコンドリア機能障害はATP産生の低下や活性酸素種の漏洩により、老化を含めた様々な病態を引き起こすと考えられている。このミトコンドリア機能は自身の形態変化(融合・分裂)によって制御されている。私たちが着目しているMITOLは、ミトコンドリア分裂因子のDrp1をユビキチン化し、分解を促すことでミトコンドリア形態を調節している。このMITOLの心臓の機能を調べるため、心筋特異的MITOL欠損マウスを作成した。興味深いことに、このMITOL欠損マウスはMITOLの発現低下によるミトコンドリアの異常な形態が続くことで心臓老化を起こすことがわかった。さらに、病的老化を引き起こす心筋梗塞の病態においては、MITOLの発現が顕著に低下し、MITOL欠損マウスと同様にミトコンドリア形態異常による心機能低下が起こることを突き止めた。心筋梗塞後のMITOL発現低下をAAVによる野生型MITOL過剰発現により抑制すると、心筋梗塞後の組織損傷の程度が改善した。したがって、病的老化や生理的老化に伴うMITOLの発現低下は、ミトコンドリア形態異常によるミトコンドリア機能不全を引き起こし、これが一部心臓老化の原因であることを示唆した(Tokuyama et al. iScience 2022)。MITOLによるDrp1の制御は、多くが明らかにされていない。我々はMITOLによるDrp1の特異的なユビキチン化サイトを同定し細胞・組織においてMITOLとDrp1は確実に相互作用していること明らかにした。また、ユビキチン化を受けないDrp1はミトコンドリアをより分裂させ、細胞機能を低下させることがわかった。MITOLの発現低下メカニズムは不明であった。我々はMITOLが心筋梗塞の環境のうち、飢餓ストレスによって発現低下していることを明らかにしストレス下でも分解を受けづらいMITOLの変異体の作成に成功した。
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Mol Genet Metab Rep
巻: 34 ページ: -
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Philos Trans R Soc Lond B Biol Sci
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