血栓塞栓症は担癌患者でよく認められる合併症であり、癌患者の死因でも癌死に次いで多い。癌の中でも膵癌は最も血栓塞栓症を発症しやすい癌であり、本研究では膵癌患者の予後に深く関わる血栓塞栓症の発症機序を検討した。「肝転移が最大の血栓塞栓症発症のリスク要因」という結果を得ていたため、「肝転移によって大循環に入りやすくなった膵癌細胞が分泌する何らかの液性因子が、全身性の血栓塞栓症発症のリスクを高めているのではないか」と考えた。検討の結果、膵癌組織の進展はVEGFによって左右され、癌の進展に伴って放出される細胞外小胞が多量になると血管内皮細胞での付着と血栓形成を惹起することが示唆された。
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