糖尿病症例の多くは1型または2型糖尿病に病型分類されるが、単一遺伝子異常のために糖尿病を発症するケースも存在する。単一遺伝子異常のために発症する糖尿病には40種類以上のサブタイプが知られているが、臨床現場では未診断の症例も少なくないとされる。このような症例に関して、正確に診断を行い適切な治療を行うことが合併症や重症化を抑制するためにも重要である。本研究では、臨床的に単一遺伝子異常に伴う糖尿病が疑われる、インスリン分泌低下やインスリン抵抗性増大が特徴的な症例を対象とした。DNA検体に関して次世代シークエンサーによるシークエンスデータの解析を行い、単一遺伝子異常に伴う糖尿病の原因候補となる遺伝因子を複数同定した。これらの遺伝因子に関して次世代シークエンサーと表現型を用いたバイオインフォマティクス解析を組み合わせた遺伝学的検査システムを、研究の解析ツールとして補助的に活用してリスクスコア等を解析した。さらに、in silicoの蛋白質構造解析や培養細胞などを用いた機能解析を行い、インスリン作用の障害を示すデータが得られ、病的意義が示唆された。高インスリン血症などの症状を認めた症例において、遺伝因子の情報を活用して解析を行い、インスリン抵抗症の原因と考えられるインスリン受容体遺伝子のバリアントを同定した。また、インスリン分泌低下を認めた症例では、若年発症成人型糖尿病(MODY)の原因と考えられるバリアントを同定した。本研究で用いた包括的な解析手法は、他の様々な疾患分野において利用されることが期待される。
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