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2019 年度 実施状況報告書

ヒト肝臓オルガノイドを用いた、脂肪肝炎を制御する細胞間シグナル機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 19K16536
研究機関東京医科歯科大学

研究代表者

米山 鷹介  東京医科歯科大学, 統合研究機構, 助教 (10748289)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2021-03-31
キーワードオルガノイド / ヒトiPS細胞 / 脂肪性肝炎 / 細胞間シグナル
研究実績の概要

非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は、脂肪肝から進行して、マクロファージによる炎症や肝星細胞による線維化を伴う疾患で、現在、慢性肝不全の最大要因となっている。従来、NASHの研究で利用されてきた動物モデルや細胞株モデルでは臨床病態と乖離があることが問題となっており、NASHの病態メカニズムには未解明な点が多く残っている。本研究では、ヒトiPS細胞由来オルガノイド創出技術を駆使することにより、異なる細胞種間で働くパラクライン因子を介したNASH進展機構を明らかにすることを目的としている。
本年度は、まず、炎症や線維化を再現可能なヒト肝臓オルガノイドをヒトiPS細胞から創出するための培養技術を確立した。すなわち、肝臓の主要な構成細胞である肝細胞に加えて、クッパー細胞や肝星細胞などの、複数種類の細胞を同時に分化させる手法をとった。細胞種マーカー解析やトランスクリプトーム解析、電子顕微鏡による形態学的解析の結果、構築されたオルガノイドには、肝細胞に加えて、クッパー細胞や肝星細胞に極めて類似した細胞群が含まれていることが明らかとなった。次に、炎症や線維化を誘導するための刺激条件を検討し、遊離脂肪酸であるオレイン酸を添加することにより、オルガノイド中にトリグリセリドの蓄積が起こるとともに、その後、TNF-αやIL-8などの炎症性サイトカインの発現が上昇、I型コラーゲン線維の細胞外沈着が生じることを見出した。一連の結果は、本オルガノイドモデルを用いることで、NASH病態に特徴的な脂肪蓄積、炎症反応、線維化が試験管内で誘導できること、そして患者由来iPS細胞を用いることで患者病態を模倣できることを示唆している。
遊離脂肪酸を長期負荷した肝臓オルガノイドにおいて、未処理群と比較して発現変動が見られる分泌因子をスクリーニングし、抗線維化活性を有するパラクライン因子を特定することに成功した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究において重要となる、脂肪性肝炎病態を再現するオルガノイドモデルの確立、および、病態進展と関連するパラクライン因子の特定に成功しているため、おおむね順調に進展していると考えている。

今後の研究の推進方策

今後は、肝臓オルガノイドにおける、特定したパラクライン因子の作用機序を細胞レベル・分子レベルで解析するとともに、関連するシグナル伝達経路に機能喪失変異を有する患者iPS細胞を用いたNASH病態解析を詳細に検討する予定である。

次年度使用額が生じた理由

分化誘導条件の最適化について、当初予定していた期間よりも短期間で完了することができた結果、使用した消耗品が少なく抑えられたため、次年度使用額が生じた。
次年度、疾患iPS細胞を用いた実験およびシングルセルRNA-seq解析を加速するために使用する計画である。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 図書 (2件)

  • [雑誌論文] Myoblasts With Higher IRS-1 Levels Are Eliminated From the Normal Cell Layer During Differentiation2020

    • 著者名/発表者名
      Okino Ryosuke、Usui Ami、Yoneyama Yosuke、Takahashi Shin-Ichiro、Hakuno Fumihiko
    • 雑誌名

      Frontiers in Endocrinology

      巻: 11 ページ: -

    • DOI

      10.3389/fendo.2020.00096

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Modeling Steatohepatitis in Humans with Pluripotent Stem Cell-Derived Organoids2019

    • 著者名/発表者名
      Ouchi Rie、Togo Shodai、Kimura Masaki、Shinozawa Tadahiro、Koido Masaru、Koike Hiroyuki、Thompson Wendy、Karns Rebekah A.、Mayhew Christopher N.、McGrath Patrick S.、McCauley Heather A.、Zhang Ran-Ran、Lewis Kyle、Hakozaki Shoyo、Ferguson Autumn、Saiki Norikazu、Yoneyama Yosuke、Takebe Takanori, et al.
    • 雑誌名

      Cell Metabolism

      巻: 30 ページ: 374~384

    • DOI

      10.1016/j.cmet.2019.05.007

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] Conceptual basis of lineage shift between intestinal epithelium and hepatocytes2020

    • 著者名/発表者名
      Sakurako Kobayashi, Satoshi Watanabe, Yosuke Yoneyama, Kousuke Tanimoto, Ryu Nishimura, Sayaka Nagata, Masami Inoue, Kouhei Suzuki, Kiichiro Tsuchiya, Ryuichi Okamoto, Mamoru Watanabe, Takanori Takebe, Shiro Yui
    • 学会等名
      Keystone Symposia on Tissue Organoids as Models of Host Physiology and Pathophysiology of Disease
    • 国際学会
  • [学会発表] マイクロデバイスによるヒューマン・オルガノイドの機能拡張2020

    • 著者名/発表者名
      米山鷹介
    • 学会等名
      第19回日本再生医療学会総会
    • 招待講演
  • [学会発表] INTERCELLULAR RNA TRANSFER-DRIVEN EPIGENETIC REPROGRAMMING OF HUMAN PLURIPOTENT STEM CELLS INTO NAIVE-LIKE STATE2019

    • 著者名/発表者名
      Yosuke Yoneyama, Ran-Ran Zhang, Masaki Kimura, Takanori Takebe
    • 学会等名
      ISSCR 2019 Annual Meeting
    • 国際学会
  • [図書] 米山鷹介、武部貴則2019

    • 著者名/発表者名
      別冊BIO Clinica 慢性炎症と疾患 適応&修復のサイエンスと臨床応用の最前線「オルガノイドを活用した医科学研究」
    • 総ページ数
      6
    • 出版者
      北隆館
  • [図書] 羊土社2019

    • 著者名/発表者名
      実験医学別冊 決定版オルガノイド実験スタンダード「多細胞系からなるヒト肝オルガノイドの創出」
    • 総ページ数
      7
    • 出版者
      大内梨江、米山鷹介、武部貴則

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公開日: 2021-01-27  

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