研究課題
肥満に端を発した脂肪肝が進行すると、炎症と線維化を伴う非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の発症に至る。NASHに特徴的な王冠様構造は、死細胞とマクロファージの相互作用の場であり、炎症と線維化の進行を決定する。しかしながら、マクロファージがどのように死細胞を認識し応答することで、NASHの進行を制御しているのかは不明である。本研究では、マクロファージにおける死細胞認識分子に介入することで、NASHの病態形成に及ぼす意義を明らかにする。死細胞認識を仲介する分子GpnmbならびにDectin-1のノックアウト(KO)マウスの骨髄細胞を、MC4R-KOマウスに移植し、ウェスタンダイエットを25週間負荷することでNASHを誘導した。王冠様構造形成ならびに線維化を組織学的に評価したが、両郡間に有意な差を認めなかったため、この2分子は単独でNASHの病態形成に及ぼす寄与は小さいと考えられた。一方、細胞死した肝細胞をマクロファージの培養系に添加すると、炎症・線維化関連因子の発現が亢進することを昨年度に見出した。この分子メカニズムを探索した結果、Gpnmbの発現制御に関わるMiT/TFE転写因子が、死細胞刺激に伴いマクロファージにおいて活性化することを見出した。MiT/TFEファミリーは炎症・線維化促進因子の発現誘導を仲介すること、王冠様構造を形成するマクロファージにおいてMiT/TFE転写因子が活性化することを明らかにした。MiT/TFE転写因子はリソソームストレスに伴い活性化することから、王冠様構造におけるマクロファージによる死細胞貪食の過程でMiT/TFE転写因子が活性化し、炎症・線維化促進因子の発現誘導を促進することで、NASHにおける炎症の慢性化と肝線維化の発症に至ると考えられた。
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iScience
巻: 24 ページ: 102032
10.1016/j.isci.2020.102032.